
テックスメックスとメキシコ料理は何が違う?同じ名前で別物の料理たち
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日本で「メキシコ料理」として出てくる、黄色いチーズがとろけたエンチラーダや、ひき肉をパリパリの皮にはさんだタコス。ところがメキシコシティの屋台で頼むタコスは、やわらかいコーントルティーヤに刻んだ肉をのせ、サルサをかけるだけです。同じ名前なのに、見た目も味もかなり違います。
その違いの多くは、「テックスメックス」と「メキシコ料理」の違いです。テックスメックスはテキサスで育ったメキシコ系の料理で、メキシコ料理とは別の歴史を歩んできました。このブログでは、同じ名前でも中身が違う料理は別々の記事にしています。どこが違い、なぜ違うのかを、歴史と料理科学の両方から整理します。
テックスメックスの成り立ち
テハーノの料理として生まれた
テックスメックス(Tex-Mex)は、「テキサス(Texas)」と「メキシコ(Mexico)」を合わせた言葉です。料理のもとになったのは、テキサスがスペイン領、そしてメキシコ領だった時代から住んでいたメキシコ系の住民「テハーノ(Tejano)」の家庭料理です。先住民の料理とスペインの料理が混ざったものに、のちにアメリカ側の食材が加わって、今のテックスメックスになりました。
牛肉、炭火で焼く料理、トルティーヤは、牧畜の土地である国境の両側で、100年以上前から食べられてきました。料理研究家ロブ・ウォルシュは、著書『The Tex-Mex Cookbook』で、テックスメックスはテキサスに住むテハーノと、ヨーロッパ系の住民の子孫が育てた料理だと説明しています。
サンアントニオのチリ・クイーン
テックスメックスを最初に外の世界に広めたのは、テキサス州サンアントニオの「チリ・クイーン」と呼ばれた女性たちです。1870年ごろから1930年ごろまで、街の中心のミリタリー・プラザ(軍の広場)などに屋台を出し、チリコンカン、タマル、エンチラーダ、メヌード(牛の胃の煮込み)などを売っていました。
1877年に鉄道が通ると、旅行者も屋台に集まりました。しかし衛生への関心が高まり、飲食店からの苦情も出て、検査や衛生証明の規則が作られました。屋台は1930年代までに街の広場から姿を消します。
コンビネーションプレートとメキシコ料理店
屋台の次に生まれたのが、アメリカ人の客に向けたメキシコ料理店です。1900年、シカゴ出身のオーティス・ファーンズワースが、サンアントニオに「オリジナル・メキシカン・レストラン」を開きました。
こうした店の看板が、1枚の皿にいくつもの料理を盛り合わせる「コンビネーションプレート」です。1940年代のサンアントニオの店の定食は、タマル、チリコンカン、エンチラーダ、フリホーレス(豆)、コーントルティーヤに、スパニッシュライスを添えたものでした。1950年代ごろのテックスメックスは、アメリカ風のチーズを使ったこの盛り合わせが中心だったとされます。
「テックスメックス」という言葉
「TexMex」という言葉は、もともと1875年に南テキサスで認可された鉄道「テキサス・メキシカン鉄道」の略称でした。1920年代には、新聞でメキシコ系のテキサス人を指す言葉として使われます。料理の名前として印刷物に出てくるのは、1960年代に入ってからです。
この言葉を「メキシコ料理とは別のもの」という意味で広めたのが、イギリス出身でメキシコに暮らした料理研究家ダイアナ・ケネディ(1923〜2022年)です。1972年の著書『The Cuisines of Mexico』で、メキシコ各地の料理と、アメリカの「いわゆるメキシコ料理店」が出す盛り合わせの皿とを、はっきり区別しました。ケネディと仲間たちは、アメリカ風のメキシコ料理を「テックスメックス」と呼ぶようになります。
テキサスのメキシコ料理店の店主たちは、この呼び方を侮辱と受け取ったといいます。一方でウォルシュは、ケネディの本を「画期的な料理書」と評価しながら、テキサスのメキシコ系の料理を、敬意を込めて「テハーノ料理」と呼ぶことを提案しています。テキサスの人たちも、テックスメックスはそれ自体がひとつの料理だと考えています。どちらが上ではなく、別々の歴史を持つ料理です。
メキシコ料理は地域の料理の集まり
メキシコ料理の基本は、トウモロコシ、豆、唐辛子です。トウモロコシは、アルカリで処理してから挽いた生地(マサ)にして、トルティーヤやタマルを作ります。唐辛子は辛さのためだけでなく、香りと味のために使われます。2010年には、メキシコの伝統料理がユネスコの無形文化遺産に登録されました。
トウモロコシをアルカリで処理する仕組みと、コーントルティーヤの作り方はこちらです。
ニシュタマル:トウモロコシを石灰で煮る理由トルティーヤに欠かせない、乾燥トウモロコシを石灰水で煮るニシュタマル。アルカリが皮をはがす仕組み、グルテンのないマサがまとまる理由、ナイアシンとカルシウムの変化、香りへの影響、日本で手に入るものまでを料理科学で解説します。
本場コーントルティーヤのレシピメキシコの主食コーントルティーヤを、マサ・アリナと水だけで。トルティーヤプレスで押しのばし、鋳鉄のスキレットで焼けば家庭のコンロでもぷくっと膨らみます。生地を休ませる理由、ひび割れの見分け方、膨らむ仕組みを料理科学で解説します。
メキシコ料理は、ひとつの料理というより、地域ごとの料理の集まりです。北部は牛肉と小麦粉のトルティーヤ、中部や南部は豚肉とコーントルティーヤが中心です。チーズは、白くてくせのないケソ・フレスコ(フレッシュチーズ)や、モッツァレラをもとにしたオアハカチーズなどが使われます。メキシコシティには、どの通りにもタコスの屋台や小さなタケリア(タコス屋)があります。

メキシコの地方の家庭料理は、メキシコの外のメキシコ料理店で出される料理とはまったく違います。メキシコの外のメキシコ料理店の多くは、何らかの形のテックスメックスだからです。メキシコシティの屋台のタコスの代表、アル・パストールの作り方はこちらです。
家庭のオーブンで作るタコス・アル・パストールメキシコシティの屋台の定番タコス・アル・パストールを家庭のオーブンで。唐辛子とアチョーテに漬けた薄切り豚肉を型に重ねて焼き、削いでスキレットで焼き付けます。パイナップルの酵素、唐辛子の焙煎、メイラード反応を料理科学で解説します。
材料の違い
ウォルシュは、テックスメックスを形づくった「黄色いチーズ、小麦粉、牛ひき肉」は、国境のアメリカ側から来た材料だと書いています。
- 黄色いチーズ:テックスメックスでは、チェダーやコルビー、モントレージャック、それらを混ぜたアメリカンチーズなど、黄色くて溶けやすいチーズをたっぷり使います。チェダーのオレンジ色は、多くの場合アナトー(アチョーテの木の種から取る色素)で付けたものです。メキシコでは、白いフレッシュチーズや、糸を引くオアハカチーズが中心です
- クミン:テックスメックスの香りの柱です。1731年、スペイン領のカナリア諸島から16家族がサンアントニオに移住しました。ウォルシュは、カナリア諸島出身の料理人たちが乾燥クミンをたっぷり使ったことが、チリの味の特徴になったと考えています(クミンパウダー:Amazon|楽天)
- チリパウダー:1894年、テキサス州ニューブラウンフェルズの酒場の主人ウィリアム・ゲブハートが、初めての市販のチリパウダーを作りました。アメリカのチリパウダーは、粉唐辛子にクミン、玉ねぎ、ガーリックパウダーなどを混ぜたものです。メキシコでは、料理ごとに違う乾燥唐辛子を焙って戻し、ソースにします(チリパウダー:Amazon|楽天)
- 牛肉:チリコンカン、ファヒータ、ひき肉のタコスなど、牛肉の料理が多くなります。メキシコでも北部は牛肉が多く、中部と南部は豚肉が中心です
- 小麦粉トルティーヤ:テックスメックスでは、小麦粉のトルティーヤを広く使います。メキシコでは国のほとんどがコーントルティーヤで、小麦粉のトルティーヤは主に北部の食べ物です
- チリグレイビー:油で小麦粉を炒め、チリパウダーとクミンを加えてスープでのばした、肉の入らないソースです。小麦粉のでんぷんでとろみをつけます。ウォルシュは、アメリカ人の客の好みに合わせた昔ながらのメキシコ料理店で生まれたソースだと書き、テックスメックスの本質と呼んでいます
逆に、昔ながらのテックスメックスのメニューには、メキシコ料理でよく使うエパソーテ(メキシコのハーブ)や、ウィトラコチェ(トウモロコシに付くきのこ)、シラントロ(パクチー)などがほとんど出てきませんでした。
メキシコの乾燥唐辛子の名前と、焙って戻す方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。
ハラペーニョがチポトレになる:生と乾燥で名前が変わるメキシコの唐辛子ハラペーニョはチポトレに、ポブラノはアンチョに。メキシコの唐辛子が生と乾燥で名前を変える理由と4つの組み合わせ、乾燥で色と香りが変わるメイラード反応、チポトレの煙の香りの正体、苦くしない焙煎と戻し方が分かります。
料理科学で見る違い
クミンの香りの正体
クミンの温かく土っぽい香りは、種に含まれる精油の成分、主に「クミンアルデヒド」から来ています。炒ったクミンには、さらに「ピラジン」と呼ばれる香ばしい香りの成分が加わります。
チリパウダーにもクミンが入っているので、両方を使うテックスメックスはクミンの香りが強くなります。このブログのテックスメックスのレシピで、クミンを油で軽く炒めてから煮込むのは、香ばしい香りを引き出すためです。
プロセスチーズがなめらかに溶ける理由
チーズは、カゼインという牛乳のたんぱく質がつながった網の中に、脂肪の粒が閉じこめられたものです。網をつなぎとめているのはカルシウムです。普通のチーズを強く加熱すると、カゼインが固まってぼそぼそのかたまりになり、脂肪が油になって分離します。
プロセスチーズは、チーズを「乳化塩」と一緒に加熱して作ります。乳化塩のクエン酸ナトリウムやリン酸塩は、カルシウムを抱え込んで網をゆるめます。小さな単位に分かれたカゼインが脂肪を包み、脂肪は細かい粒のまま散らばります。そのため、温めても分離せず、なめらかに溶けます。
テキサスのケソが、ベルビータなどのプロセスチーズで作られるのはこのためです。メキシコのケソ・フンディードは、オアハカチーズなどの溶けるチーズを焼いて、のびる食感を楽しみます。どちらも「チーズを溶かす料理」ですが、目指す食感が違います。
小麦粉トルティーヤのグルテン
小麦粉に水を加えてこねると、小麦のたんぱく質のグルテニンとグリアジンがつながり、「グルテン」の網ができます。グルテニンは網に弾力を、グリアジンは粘りと伸びを与えます。小麦粉のトルティーヤが薄くても破れにくく、大きなブリトーを巻けるのは、このグルテンの網のおかげです。
テキサスA&M大学の研究によると、時間がたつとでんぷんが硬く固まり(老化)、グルテンの動きを妨げるので、トルティーヤは硬く割れやすくなります。ブリトーを巻く前にトルティーヤを温めるのは、この硬さをやわらげるためです。
同じ名前で別物の料理たち
ブリトー
メキシコのブリトーは、北部のシウダー・フアレスなどの国境の町の料理です。小さく細い小麦粉トルティーヤに、肉や豆など1〜2種類の具だけを巻きます。中部や南部では、小麦粉のトルティーヤで巻いたものは「タコス・デ・アリナ(小麦粉のタコス)」と呼ばれます。
テキサスのスマザード・ブリトーは、具を巻いたブリトーに赤いソースとチーズをかけて焼き、ナイフとフォークで食べます。作り方はこちらです。
家庭のオーブンで作るスマザード・ブリトーテキサスのテックスメックス料理、スマザード・ブリトーを家庭のオーブンで。牛肉の煮込みと豆、ご飯をトルティーヤで巻き、チリグレイビーとチーズをかけて焼きます。チーズの焼き色と、温めると破れにくいトルティーヤの理由を料理科学で解説します。
エンチラーダ
エンチラーダは、トルティーヤで具を巻き、ソースをかけた料理です。メキシコでは、モレをかければエンモラーダ、豆ならエンフリホラーダと、ソースの違いで名前が変わります。「エンチラーダ・スイサ(スイス風)」は、クリームを加えた緑のソースをかけ、チーズをのせて焼きます。スイスからの移民が開いた酪農場のクリームとチーズにちなんだ名前です。
テックスメックスの定番は、黄色いチーズと玉ねぎを巻いて、チリグレイビーをかけて焼くチーズエンチラーダです。2つの作り方はこちらです。
家庭のオーブンで作るテックスメックス・エンチラーダテックスメックスの定番、チーズ・エンチラーダを家庭のオーブンで。コーントルティーヤにチーズと玉ねぎを巻き、チリグレイビーをかけて焼きます。ルーでとろみがつく理由、プロセスチーズが分離しない理由、トルティーヤを温める理由を料理科学で解説します。
家庭のオーブンで作るエンチラーダ・スイサメキシコシティのエンチラーダ・スイサを、家庭のオーブンで。鶏肉を巻いたトルティーヤにトマティーヨのクリームソースとチーズをのせて焼きます。トルティーヤを油にくぐらせる理由、クリームが分離しにくい条件、チーズの焦げ目を料理科学で解説します。
ケソとケソ・フンディード
テキサスの「ケソ」は、正式には「チレ・コン・ケソ(唐辛子入りのチーズ)」です。メキシコ北部チワワ州の料理がもとと考えられていますが、テキサスではプロセスチーズを溶かしてトルティーヤチップスにつけるディップになりました。
ケソ・フンディード(溶けたチーズ)は、オアハカチーズやチワワチーズを熱々に溶かし、チョリソをのせた料理です。チップスではなく、小さなやわらかいトルティーヤにのせて食べます。メキシコ北部とアメリカ南西部の国境地帯で生まれたといわれます。2つの作り方はこちらです。
本場ケソ(チーズディップ)のレシピテキサスのテックスメックスを代表するチーズディップ、ケソ。とろけるスライスチーズとロテルで作る家庭の定番と、チェダーとクエン酸ナトリウムで作る方法を紹介。チーズが分離する理由と乳化塩の働きを料理科学で解説します。
家庭のオーブンで作るケソ・フンディードメキシコ北部のケソ・フンディードを、小さな鋳鉄スキレットと家庭のオーブンで。溶けるチーズに手作りの簡易チョリソをのせて焼き、小麦粉のトルティーヤに巻いて食べます。チーズが糸を引く仕組みや油が分離する理由を料理科学で解説します。
バルバコア
メキシコ中部のバルバコアは、羊肉を地面に掘った穴で蒸し焼きにする料理です。穴に葉を敷いて肉を包み、土をかぶせて焼きます。イダルゴ州のメスキタル盆地が有名で、昔から家庭で作るより、市場で買うものでした。
テキサスなどアメリカでは、牛の頭の肉、とくにほほ肉で作るバルバコアが一般的です。南テキサスのバルバコアの作り方はこちらです。
家庭のオーブンで作るバルバコア(南テキサス式)南テキサスの日曜の朝の定番バルバコアを家庭のオーブンで。牛ほほ肉をダッチオーブンに入れ、150〜160℃で4〜5時間蒸し焼きにしてほぐします。コラーゲンのゼラチン化、湿熱と乾熱の違い、煮汁を戻す理由を料理科学で解説します。
カルニタス
カルニタスは、メキシコ中西部ミチョアカン州の豚肉料理です。厚手の鍋で豚肉をラードで煮て、やわらかくなったら火を強めて表面をカリッとさせます。このブログでは、ラードで煮る本場の作り方と、アメリカで広まった作り方を別の記事にしています。
家庭のオーブンで作るカルニタス(メキシコ式)メキシコ・ミチョアカン州のカルニタスを、ダッチオーブンと家庭のオーブンで。豚肩ロースをラードで煮て、水分が飛んだら表面をカリッと仕上げます。水が温度にブレーキをかける仕組み、ラードの役割、オレンジや牛乳、コーラの効果を料理科学で解説します。
家庭のオーブンで作るカルニタス(アメリカ式)アメリカの家庭で広まったカルニタスを、ラードを使わずに家庭のオーブンで。豚肩ロースをオレンジやスパイス、コーラと160℃で蒸し煮にし、ほぐして上火でカリッと焼きます。煮てから焼く理由、コーラの砂糖とメイラード反応を料理科学で解説します。
チリコンカン
チリコンカンは、テハーノやメキシコ系の働く女性たちから生まれ、サンアントニオのチリ・クイーンが広めた料理です。メキシコにも、唐辛子で肉を煮る料理は広くあります。それでもウォルシュによれば、1958年にメキシコシティで出た辞書は、チリコンカンを「アメリカでメキシコ料理を名乗っているひどい料理」と定義しました。テキサスでは1977年に州の公式料理に定められています。豆を入れないテキサス式のチリコンカンの作り方はこちらです。
家庭のオーブンで作るテキサス式チリコンカン豆を入れないテキサス式の本場のチリコンカンを、家庭のオーブンで。角切りの牛肩ロースをアンチョとグアヒージョのソースで、150℃のオーブンで煮込みます。唐辛子を焼く理由、赤い色が脂に溶ける理由、肉が柔らかくなる仕組みを料理科学で解説します。
ハードシェルタコス
U字形に揚げたコーントルティーヤに、味付けした牛ひき肉、チーズ、レタスを詰めるハードシェルタコスは、アメリカで生まれました。1940年代には、揚げたタコスの皮を作る調理器具の特許が出されています。1962年には、タコスを売るファストフードチェーン「タコベル」の1号店ができました。
メキシコの揚げたタコス「タコス・ドラドス(黄金のタコス)」は、トルティーヤで具を細長く巻いて揚げたもので、フラウタやタキートとも呼ばれます。ハードシェルタコスの作り方はこちらです。
家庭で作る本格ハードシェルタコスアメリカで生まれたテックスメックスのハードシェルタコスを家庭で。牛ひき肉を自家製のタコスシーズニングで味つけし、市販のタコシェルをオーブンで温めて詰めます。ひき肉の焼き方とメイラード反応、スパイスを脂で炒める理由を料理科学で解説します。
フラウタやタキートなど、トルティーヤ料理の名前の見分け方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
タコス、エンチラーダ、チラキレス…トルティーヤ料理の名前の見分け方タコス、エンチラーダ、トスターダ、フラウタ、チラキレス。メキシコのトルティーヤ料理の名前は、具ではなく、たたむ・ソースにくぐらせる・揚げる・割るという加工で決まります。名前の見分け方と、冷めたトルティーヤが割れる理由を料理科学で解説します。
ナチョス
ナチョスは、実はメキシコ側の国境の町で生まれました。1943年、コアウイラ州ピエドラス・ネグラスの「ビクトリー・クラブ」で、イグナシオ・“ナチョ”・アナヤが、対岸のテキサス州イーグルパスから来たアメリカ軍将校の妻たちのために、揚げたトルティーヤにチーズとハラペーニョの酢漬けをのせて出したのが始まりとされます。
チーズソースをかける今の形は、1976年にテキサス州アーリントンの野球場で売り出された「ボールパーク・ナチョス」からです。ナチョスの作り方はこちらです。
家庭のオーブンで作るナチョス1943年にメキシコ北部の国境の町で生まれたナチョスを、家庭のオーブンで天板1枚分。220℃で短時間に焼き、チーズを水分の壁にして具をのせます。チップスがしける理由と、水分の多い具を焼いた後にのせるわけを料理科学で解説します。
ファヒータ
ファヒータは、1930年代の南テキサスと西テキサスの牧場で生まれました。牛の横隔膜の肉(スカートステーキ)は、まかないとしてバケーロ(牛飼い)に渡される安い部位でした。「ファハ」はスペイン語で「帯」のことで、ファヒータは細長い帯状の肉を指します。1973年からは、ヒューストンの「ニンファズ」などの店が広めました。
メキシコ北部でもこの部位は「アラチェラ」と呼ばれ、炭火焼きの人気の肉で、「タコス・デ・アラチェラ」として食べられます。ウォルシュはファヒータを、テキサスのテハーノが生んだ本物の「テハーノ料理」と呼んでいます。ファヒータと、メキシコ北部の焼き肉のタコス、カルネ・アサーダの作り方はこちらです。
本場ファヒータのレシピテキサス生まれのテックスメックス料理ファヒータを、牛ハラミと鋳鉄のスキレットで。強火で焼いた肉とピーマン、玉ねぎを小麦粉のトルティーヤで巻いて食べます。繊維を断つ切り方、鋳鉄が温度を保つ理由、マリネが短くてよい理由を料理科学で解説します。
本場カルネ・アサーダのレシピメキシコ北部の焼き肉カルネ・アサーダを、炭火の代わりに煙が出るまで熱した鋳鉄のスキレットで。柑橘とにんにくで短くマリネしたハラミを強火で焼き、刻んでタコスに。メイラード反応、マリネの効き方、繊維を断つ切り方を料理科学で解説します。
まとめ
- テックスメックスは、テキサスのメキシコ系住民テハーノの料理から生まれ、チリ・クイーンの屋台やコンビネーションプレートの店で育った
- 「テックスメックス」という呼び方は、ダイアナ・ケネディがメキシコ各地の料理と区別したことで広まった
- テックスメックスは黄色いチーズ、クミン、牛肉、小麦粉トルティーヤ、チリグレイビーが特徴。メキシコ料理は地域ごとに違い、トウモロコシと唐辛子が基本
- プロセスチーズがなめらかに溶けるのは乳化塩、小麦粉トルティーヤが巻けるのはグルテンのおかげ
- ブリトー、エンチラーダ、バルバコアなどは、同じ名前でも中身が違う別の料理として楽しめる
もっと知りたい人へ
テックスメックスの歴史を、写真とレシピでたどれる本です(英語)。
ロブ・ウォルシュ『The Tex-Mex Cookbook: A History in Recipes and Photos』(Amazon|楽天)
テックスメックスと区別して、メキシコ各地の料理を紹介した古典『The Cuisines of Mexico』を含む3冊を、1冊にまとめた改訂版です(英語)。
ダイアナ・ケネディ『The Essential Cuisines of Mexico』(Amazon|楽天)
メキシコの地方料理を、アメリカの家庭で作れるように紹介した本です。
Rick Bayless's Mexican Kitchen(Amazon)
チーズや小麦粉の科学を詳しく知りたい人には、料理科学の定番の本があります。
マギー キッチンサイエンス(ハロルド・マギー『On Food and Cooking』の日本語版)(Amazon|楽天)
出典
- Wikipedia「Tex-Mex」
- Houston Press(Robb Walsh)「Combination Plates」
- Houston Press(Robb Walsh)「Mama's Got a Brand-new Bag」
- Houston Press(Robb Walsh)「Brave Nuevo World」
- Dallas Observer「On The Range: Combination Plates」
- Texas Highways「Hot Dish: San Antonio's Famed Chili Queens」
- Texas Public Radio「San Antonio's Chili Queens: The story behind their 60-year reign」
- Texas Monthly「The Bloody San Antonio Origins of Chili Con Carne」
- Homesick Texan「Cheese enchiladas: the essence of Tex-Mex」
- Wikipedia「Diana Kennedy」
- Wikipedia「Mexican cuisine」
- Wikipedia「Chili powder」
- Wikipedia「Cheddar cheese」
- Wikipedia「Flour tortilla」
- Wikipedia「Cumin」
- Wikipedia「Processed cheese」
- Wikipedia「Gluten」
- Texas A&M University「Roles of carbohydrates and proteins in the staling of wheat flour tortilla」
- Wikipedia「Burrito」
- Wikipedia「Enchilada」
- Wikipedia(スペイン語)「Enchiladas suizas」
- Wikipedia「Chile con queso」
- Wikipedia「Queso flameado」
- Wikipedia「Barbacoa」
- Wikipedia「Carnitas」
- Wikipedia「Chili con carne」
- Wikipedia「Taco」
- Wikipedia「Nachos」
- Wikipedia「Fajita」
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。