
本場ケソ(チーズディップ)のレシピ
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ケソは、とろとろに溶かしたチーズに唐辛子やトマトを混ぜた、テキサスのテックスメックスを代表するチーズディップです。トルティーヤチップスですくって食べるのが定番で、テキサスではパーティーにも、レストランの前菜にも欠かせません。
チーズを溶かすだけに見えますが、普通のチーズを鍋で温めると、油が分離してぼそぼそに固まってしまいます。なめらかなケソを作るには、ちょっとした科学のコツがあります。
本場のケソとは
ケソ(queso)はスペイン語で「チーズ」という意味です。正式には「チレ・コン・ケソ(chile con queso=唐辛子入りのチーズ)」といい、テキサスでは略して「ケソ」と呼ばれています。
ルーツは、メキシコ北部チワワ州のチーズ料理「ケソ・フラメアード」だと考えられています。メキシコのチレ・コン・ケソは、焼いて皮をむいた青唐辛子とトマト、玉ねぎを、アサデロという白いチーズで煮込んだ料理で、チップスではなく温かいトルティーヤで包んで食べます。これがアメリカに渡り、20世紀のテックスメックスの中で、チップスにつけるとろとろのディップに変わっていきました。
テキサスのケソを決めた2つの缶と箱
テキサスの家庭のケソといえば、「ベルビータ」というチーズと、「ロテル」という缶詰を混ぜて溶かすだけの作り方が定番です。
ベルビータは、1918年にニューヨーク州のチーズ職人エミール・フライが、割れたチーズのかけらを再利用するために開発した、なめらかに溶けるチーズです。名前は「ベルベットのようになめらか」という意味から来ています。ロテルは、1943年にテキサス州南部の町エルサで、缶詰業者のカール・ロッテルが売り出した、トマトと青唐辛子を合わせた缶詰です。1949年からはケソの材料として売り出され、ベルビータとロテルの組み合わせはテキサスの家庭の味として定着しました。
テキサスの州都オースティンは「ケソの街」として知られ、レストランごとに具や辛さの違うケソがあります。ひき肉やワカモレ、豆をのせた豪華なケソは「ケソ・コンプエスト(盛り合わせのケソ)」と呼ばれます。
ケソのレシピ:材料(4〜6人分)
ケソの作り方を2つ紹介します。本場テキサスの家庭と同じ、溶けやすいチーズを使う簡単な作り方と、チェダーなど普通のチーズで作る作り方です。
作り方A:とろけるスライスチーズで作る(テキサスの家庭の定番)
- とろけるスライスチーズ450g(約25枚)
- ロテル(トマトと青唐辛子の缶詰)(楽天)1缶(283g)
テキサスの家庭では、ベルビータ1箱(約450g)にロテル1缶を汁ごと入れて溶かします。ロテルの汁がチーズをちょうどよくゆるめるので、牛乳などの水分は足しません。
ベルビータは日本ではほとんど売られていません(輸入品の通販はありますが、海外からの取り寄せのため高価です。楽天)。代わりに、日本の「とろけるスライスチーズ」を使います。ベルビータと同じプロセスチーズの仲間で、温めると溶けるように作られています。普通のスライスチーズや6Pチーズは、温めても溶けにくいので向きません(理由は後で説明します)。
ロテルが手に入らないとき
作り方B:チェダーとモントレージャックで作る
モントレージャックは、アメリカ・カリフォルニア州生まれのくせのない白いチーズで、よく溶けて糸を引きます。手に入らなければ、チェダーだけで作ってもかまいません。
クエン酸ナトリウムは、クエン酸のナトリウム塩で、食品添加物として売られている白い粉です。チーズをなめらかに溶かす役割があり、作り方Bではこれがいちばん大事な材料です。
チーズはブロックを買って自分で削ってください。袋入りのシュレッドチーズには、くっつかないように粉がまぶしてあり、溶かしたときにざらつく原因になります(理由は後で説明します)。
仕上げ(共通・好みで)
道具
- 小さめの鍋、または鋳鉄のスキレット:鋳鉄は冷めにくいので、そのまま食卓に出してもしばらくとろとろのまま食べられます(Amazon|楽天)
- 泡立て器またはゴムべら
- チーズおろし(作り方B):4面のものの、粗いおろし目を使います(Amazon|楽天)
作り方
作り方A:とろけるスライスチーズで作る
ちぎる
スライスチーズを細かくちぎる。
溶かす
小鍋にチーズとロテルを汁ごと入れ(ロテルがないときはトマト、ハラペーニョ、牛乳)、弱火にかける。ゴムべらで混ぜながら、チーズが完全に溶けてなめらかになるまで5〜8分温める。
仕上げる
好みでシラントロを散らし、温かいうちにトルティーヤチップスを添える。
作り方B:チェダーとモントレージャックで作る
チーズを削る
チェダーとモントレージャックをチーズおろしで粗く削る。
野菜を炒める
鍋にサラダ油を中火で熱し、玉ねぎを2〜3分炒めてしんなりさせる。クミンを加えて10秒ほど炒める。
クエン酸ナトリウムを溶かす
牛乳とクエン酸ナトリウムを加えて混ぜ、ふつふつと小さな泡が出るまで温める。
チーズを溶かす
弱火にして、チーズをひとつかみずつ加え、泡立て器で混ぜて溶かす。溶けてから次を加える。全部溶けたら、1〜2分混ぜながら温めてなめらかにする。
具を加える
トマトとハラペーニョを加えて混ぜる。かたすぎるときは牛乳を大さじ1ずつ足す。
仕上げる
好みでシラントロを散らし、温かいうちにトルティーヤチップスを添える。
冷めて固まったら、弱火か電子レンジで温め直せば、またなめらかに戻ります。
料理科学:チーズを分離させずに溶かすには
普通のチーズはなぜ分離するのか
チェダーなどのチーズを鍋で温めると、とろりと溶けるかわりに、油が浮いてチーズが糸のようにかたまってしまうことがあります。これはチーズの中で、たんぱく質と脂肪が分かれてしまうからです。

チーズは、「カゼイン」という牛乳のたんぱく質がつながり合った網の中に、脂肪の粒や水分が閉じこめられたものです。この網をつなぎとめる「のり」の役目をしているのがカルシウムです。
チーズを温めると、網がゆるんで溶けます。ところが温度が高すぎたり、長く温めすぎたりすると、カゼインどうしが再びかたく結びついて縮み、ぼそぼそのかたまりになります。網から押し出された脂肪は、油となって表面に浮きます。これが「分離」です。熟成の進んだチーズほど、たんぱく質が分解されていて、分離しやすくなります。
クエン酸ナトリウムがカルシウムを抱え込む
作り方Bで使ったクエン酸ナトリウムは、「乳化塩(にゅうかえん)」と呼ばれるものの一種です。乳化塩は、カゼインの網をつなぎとめているカルシウムを抱え込んで、網から引き離す働きをします。
カルシウムが外れると、カゼインはかたいかたまりを作らなくなり、水にも脂肪にもなじむ性質が強くなります。ばらばらになったカゼインが脂肪の粒のまわりを包み込み、脂肪を細かい粒のまま水の中に散らばった状態に保ちます。水と油が混ざり合ったこの状態を「乳化」と呼びます。こうしてチーズは、温めても分離しないなめらかなソースになります。
チーズにクエン酸ナトリウムを加えると溶けやすくなることは、1911年にスイスで発見されました。エメンタールチーズを溶かす研究の中で見つかったもので、これが「プロセスチーズ」の始まりです。
溶けるプロセスチーズと溶けないプロセスチーズ
プロセスチーズは、ナチュラルチーズを砕いて、乳化塩と一緒に加熱して溶かし、固め直したチーズです。ベルビータも、日本のスライスチーズや6Pチーズも、このプロセスチーズの仲間です。
乳化塩が入っているので、温めても油が分離することはありません。ただし、一度しっかり加熱して練り上げたチーズは、たんぱく質の状態が変わっているため、もう一度温めても溶けて流れにくくなります。日本の普通のスライスチーズや6Pチーズは、温めてもやわらかくなるだけで形が残ります。お弁当に入れても溶け出さないのはこのためです。
「とろけるスライスチーズ」は、原料のチーズの熟成具合や加熱の温度を調整して、加熱しすぎない状態で作ったプロセスチーズです。そのため、温めるとよく溶けます。ベルビータも、温めるとなめらかなソースになるように作られたプロセスチーズです。作り方Aでとろけるスライスチーズを使うのはこのためです。
シュレッドチーズがざらつく理由
袋入りのシュレッドチーズには、チーズどうしがくっつかないように、でんぷんやセルロースの粉がまぶしてあります。この粉は溶けないので、ソースにするとざらついた舌ざわりになり、なめらかに仕上がりにくくなります。ケソにはブロックのチーズを自分で削って使うのがおすすめです。
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本場との違い
- チーズと缶詰:テキサスの家庭ではベルビータとロテルが定番です。ベルビータは日本では手に入りにくいので、作り方Aでは同じプロセスチーズの仲間のとろけるスライスチーズで作っています。ロテルは輸入品を使うか、生のトマトとハラペーニョの酢漬けで代用します。
- 唐辛子:本場のレストランでは、焼いて皮をむいたポブラノやアナハイムといった青唐辛子を使うこともあります。日本では手に入りにくいので、作り方Bではハラペーニョの酢漬けにしています。
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食べ方
- トルティーヤチップス:もっとも定番の食べ方です。
- ケソ・コンプエスト:ケソの上に、炒めたひき肉やワカモレ、ピコ・デ・ガヨをのせると、テキサスのレストラン風の豪華なケソになります。
- ハードシェルタコス:ひき肉のタコスにかけてもおいしく食べられます。
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保存
冷蔵で3日程度が目安です。冷めると固まりますが、弱火か電子レンジで温め直すとなめらかに戻ります。温め直すときは、途中で一度混ぜてください。
もっと知りたい人へ
チーズが溶ける仕組みをはじめ、食材の科学を詳しく知りたい人には、料理科学の定番の本があります。
マギー キッチンサイエンス(ハロルド・マギー『On Food and Cooking』の日本語版)(Amazon|楽天)
出典
- Wikipedia「Chile con queso」
- Wikipedia「Velveeta」
- Wikipedia「Processed cheese」
- The Takeout「How Rotel Became A Crucial Queso Ingredient」
- Homesick Texan「A more natural chile con queso」
- 明治「チーズの性質」
- The Cheese Professor「Why Sodium Citrate is the Secret to the Silkiest Cheese Sauce」
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。