
家庭のオーブンで作るカルニタス(アメリカ式)
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アメリカの家庭で作られるカルニタスは、メキシコの本場とは作り方がまったく違います。大量のラードは使わず、オレンジ果汁とスープで豚肩肉を蒸し煮にし、ほぐしてからオーブンの上火で焼いて表面をカリッとさせます。
ラードを1kgも用意する必要がないので、日本の家庭でも気軽に作れるのが魅力です。
アメリカ式カルニタスとは
カルニタス(carnitas)はスペイン語で「小さな肉」という意味で、もともとはメキシコ・ミチョアカン州の料理です。本場では、豚肉をラードでじっくり煮て、最後に揚げるように仕上げます。
アメリカでは、この料理が家庭向けにアレンジされて広まりました。ラードで煮る代わりに、鍋に肉とスパイス、オレンジ、スープを入れてオーブンで蒸し煮にし、仕上げにグリル(上火)で焼き目をつけます。メキシカンレストランやファストカジュアルのチェーン店でもおなじみの具材です。

味つけにも違いがあります。メキシコの本場は塩とオレンジ程度のシンプルな味つけが基本ですが、アメリカ式はクミンやチリパウダー、オレガノなど、テックスメックスらしいスパイスをしっかり効かせます。
テックスメックス(Tex-Mex)は「テキサス」と「メキシコ」を合わせた言葉で、メキシコと国境を接するテキサス州で、メキシコ系の人々の家庭料理がアメリカの食材や好みと混ざり合って生まれた料理のことです。牛肉やチーズ、クミンをたっぷり使うのが特徴で、チリコンカンやファヒータ、ハードシェルタコスなどが代表的な料理です。
煮汁にコーラを入れるのも、アメリカのレシピでよく見られる作り方です。オレンジ果汁や牛乳と組み合わせるレシピもあります。
カルニタスのレシピ:材料(4〜6人分)
豚肉
煮汁とスパイス
チリパウダーは、アメリカでは唐辛子にクミンやオレガノ、ガーリックなどを混ぜたブレンドスパイスのことです。日本のスーパーで売っている「チリパウダー」もブレンドのものが多いので、それで大丈夫です。一味唐辛子で代用すると辛くなりすぎるので注意してください。
コーラは、メキシコで売られているサトウキビ糖の瓶入り「メキシカン・コーク」がアメリカでも人気ですが、日本の普通のコーラでも大丈夫です。
道具
作り方
下準備
オーブンを160℃に予熱する。豚肉は8〜10cm角に切る。オレンジは果汁を搾り、皮はとっておく。
鍋に入れる
ダッチオーブンに塩、スパイス、ローリエ、玉ねぎ、オレンジ果汁と皮、ライム果汁、鶏ガラスープ、コーラを入れて混ぜ、豚肉を加える。
オーブンで蒸し煮にする
ふたをして160℃のオーブンで3時間〜3時間半煮る。フォークで押すと簡単にほぐれるくらいまで柔らかくなれば煮上がり。
ほぐす
肉を取り出して大きな脂のかたまりを取り除き、フォーク2本で2〜3cm大にほぐす。煮汁はとっておく。
煮汁をからめる
ほぐした肉を天板に広げ、煮汁大さじ6(90ml)を全体に回しかける。
上火で焼く
オーブンのグリル(上火)機能で5〜8分、ふちがカリッと色づくまで焼く。グリル機能がない場合は、最高温度(250℃前後)にした庫内の上段で焼く。裏返してさらに5分焼く。
仕上げ
焼き上がったら煮汁を少しかけてしっとりさせ、タコスやご飯にのせる。
料理科学:なぜ「煮てから焼く」のか
蒸し煮だけでは焼き色がつかない
手順3の蒸し煮では、肉は煮汁と蒸気に包まれています。水がある環境では温度はおよそ100℃までしか上がりません。焼き色と香ばしさを生むメイラード反応が勢いよく進むのは、おおむね120℃を超えてからなので、蒸し煮だけでは表面に焼き色がつかないのです。
そこで手順6で、水分の少ない状態にして上火の強い熱を当てます。肉の表面の水分が飛ぶと温度が100℃を超え、ここで一気に焼き色がつきます。
ほぐしてから焼く理由
かたまりのまま焼くと、焼き色がつくのは外側だけです。先にほぐしておくと、ほぐれた繊維の一本一本のふちが熱に当たるので、カリッとした部分がぐっと増えます。カリカリとしっとりが混ざった食感は、この「ほぐしてから焼く」ことで生まれます。

煮汁を回しかける理由
煮汁には、肉から溶け出したゼラチンと、オレンジ由来の糖分が含まれています。焼く前に煮汁をかけておくと、焼いている間に肉が乾きすぎるのを防げます。さらに、表面に残った糖分と肉のたんぱく質が上火の熱でメイラード反応を起こし、香ばしい焼き色がつきます。
コーラを入れる理由
コーラには、主に3つの成分が料理に関わっています。
ひとつ目は砂糖です。コーラにはたっぷりの砂糖が含まれています。煮汁にコーラを入れておくと、手順5で煮汁を回しかけたときに糖分が肉の表面に残ります。上火で焼くと、この糖分が肉のたんぱく質とメイラード反応を起こし、さらに糖分そのものもカラメル化して、焼き色と照りがつきやすくなります。
ふたつ目はカラメル色素です。コーラの茶色は、もともと砂糖を焦がして作るカラメル色素の色です。煮汁に入れると、その色が煮汁と肉に移り、焼く前から濃い色に仕上がります。
みっつ目はリン酸です。コーラのすっきりした酸味はリン酸によるもので、甘さを引き締め、こってりした豚肉の味を軽くしてくれます。「コーラの酸で肉が柔らかくなる」と説明されることもありますが、酸が効くのは肉の表面だけです。中まで柔らかくなるのは、長時間の加熱でコラーゲンがゼラチンに変わるためです。なお、メイラード反応は酸性の環境ではむしろ進みにくくなりますが、コーラは糖分が多いので、全体としては焼き色がつきやすくなります。
焼き色をつけるメイラード反応とカラメル化は、こちらの記事で詳しく解説しています。
メイラード反応とカラメル化:焼き色と香りの正体焼いた肉や玉ねぎが茶色く香ばしくなる理由を、メイラード反応とカラメル化の違いから解説します。焼き色は表面が乾いてからつく仕組み、焦げとの境目、焼き付けで肉汁は閉じ込められない理由、BBQのバークの正体が分かります。
硬い肩肉が柔らかくなる仕組み
肩肉が3時間で柔らかくなるのは、肉のコラーゲンが70℃を超えたあたりから少しずつゼラチンに変わるためです。くわしくはプルドポークの記事と、コラーゲンとゼラチンの解説記事で解説しています。
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コラーゲンとゼラチン:かたい肉がほろほろになるまでかたい牛すねやブリスケット、豚の肩肉が、長く加熱するとほろほろになるのはなぜか。コラーゲンが縮む温度とゼラチンに変わる温度と時間、しっとり感の正体、湿熱と乾熱、ストール、圧力鍋との違いが分かります。
メキシコ式のカルニタスとの違い
- 加熱の仕方:メキシコ式はラードで煮てから揚げます。アメリカ式はスープで蒸し煮にしてから上火で焼きます。
- カリッとさせる方法:メキシコ式は水分が飛んだあとのラードで揚げます。アメリカ式はオーブンのグリルで焼きます。
- 味つけ:メキシコ式は塩とオレンジが基本のシンプルな味です。アメリカ式はクミンやチリパウダーを効かせたテックスメックスの味です。
- 手軽さ:アメリカ式はラードを大量に用意しなくてよいので、家庭で作りやすくなっています。
本場メキシコ式のカルニタスは、こちらの記事で紹介しています。
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食べ方
- タコス:コーントルティーヤ(Amazon|楽天)で包み、玉ねぎ、シラントロ(パクチー)、サルサやピコ・デ・ガヨ、ライムをのせる
- ブリトーボウル:ご飯、豆、レタス、ピコ・デ・ガヨやサルサ、チーズと一緒にどんぶりに盛る。アメリカで人気の食べ方です
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保存
- 冷蔵:ほぐした肉を煮汁大さじ2〜3と一緒に保存容器に入れて4日程度
- 冷凍:小分けにして保存袋に入れて1か月程度。食べるときはフライパンで焼き直すとカリッとした食感が戻ります
出典
- The Modern Proper「Carnitas」
- Foodie Crush「Carnitas」
- Food Republic「Coca-Cola, Orange Juice, And Milk Are The Unlikely Combo You Need For Carnitas」
- Wikipedia「Tex-Mex」
- Wikipedia「Coca-Cola formula」
- Wikipedia「Carnitas」
- Absurdly Optimized「Carnitas from first principles」
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。