鋳鉄のスキレットで溶かした白いチーズに、炒めたチョリソが散り、赤い脂がにじんだケソ・フンディード。左奥に重ねた小麦粉トルティーヤ
タコスとメキシコ料理

家庭のオーブンで作るケソ・フンディード

地域
メキシコ北部
分量
2〜3人分、直径16cmのスキレット1台分
公開

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ケソ・フンディードは、小さな器でぐつぐつに溶かした白いチーズに、炒めたメキシコのチョリソをのせた、メキシコ北部の料理です。熱々のチーズをフォークですくって小麦粉のトルティーヤにのせ、くるりと巻いて食べます。スプーンを持ち上げると、チーズがどこまでも長く伸びます。

名前が似ているテキサスの「ケソ」は、チップスにつけるとろとろのチーズディップで、別の料理です。ケソ・フンディードのレシピは、チーズを焼くだけの簡単なものですが、糸をよく引かせるにはチーズの選び方と焼き加減が大事です。小さな鋳鉄のスキレットと家庭のオーブンがあれば、メキシコ北部の食堂と同じように、器ごと食卓に出せます。

本場のケソ・フンディードとは

ケソ・フンディード(queso fundido)は、スペイン語で「溶かしたチーズ」という意味です。お酒をかけて火をつける仕上げ方から「ケソ・フラメアード(炎をあげたチーズ)」とも呼ばれ、チョリソ入りのものは「チョリケソ」とも呼ばれます。

牧場のたき火から生まれた料理

ケソ・フンディードは、メキシコ北部とアメリカ南西部の国境地帯で、たき火で作る料理として生まれたといわれています。牧畜の文化と結びついた料理で、メキシコでも北部のレストランでよく出されます。国境の町、テキサス州エルパソでは地元の料理とされています。

北部のチワワ州では、この料理を「チレ・コン・ケソ」と呼ぶこともあります。テキサスのチーズディップと同じ名前ですが、指しているのはケソ・フンディードのほうです。テキサスの雑誌『テキサス・マンスリー』は、ケソ・フンディードを、テキサスのチレ・コン・ケソのもとになった料理だと紹介しています。

チーズとチョリソは別々に用意し、出す直前に合わせます。浅い小さな土鍋や耐熱の器に入れ、ぐつぐつ煮立った熱々のまま出します。レストランでは、ラムやブランデー、テキーラなど強いお酒をチーズにかけて火をつけ、燃えている間に具を混ぜ込む演出もあります。北部のコアウイラ州では、炭火焼きの網の上でアサデロを溶かし、チョリソや焼いた唐辛子、サルサと合わせて食べます。

北部の溶けるチーズ

ケソ・フンディードに使うのは、メキシコの白い溶けるチーズです。

  • チワワチーズ:メキシコ北部のメノナイト(キリスト教の一派)の共同体が作り始めたチーズで、チワワ州や近くの州では「ケソ・メノニータ(メノナイトのチーズ)」と呼ばれます。マイルドな白いチェダーやモントレージャックに似た味で、よく溶けます
  • アサデロ:チワワ州のビジャ・アウマダで生まれ、ソノラ州やコアウイラ州に広まったチーズです。チーズのもとを熱いホエイ(乳清)の中で練って伸ばす「糸のチーズ」で、すぐに溶けます。メキシコ北部の食文化の象徴とされています
  • オアハカチーズ(ケシージョ):南部オアハカ州のチーズです。アサデロと同じ「糸のチーズ」で、こちらは熱いお湯の中で練って伸ばします。溶かすとよく糸を引きます

メキシコのチョリソ

ケソ・フンディードにのせるチョリソは、メキシコの生のチョリソです。スペインのチョリソは、発酵させて乾燥・燻製した硬いソーセージで、薄く切ってそのまま食べられます。メキシコのチョリソは、スペインの「生のチョリソ」がもとになったもので、ひき肉に唐辛子と酢を混ぜて作ります。生の豚肉なので、必ず火を通して食べます。ケーシング(腸の皮)に詰めないものも多く、詰めてあるものも、皮から出してフライパンでほぐしながら炒めます。

メキシコでは、中部の町トルーカが「チョリソの都」として知られています。トルーカの赤いチョリソは、アンチョやグアヒージョといった乾燥唐辛子で赤く色をつけます。

ケソ・フンディードのレシピ:材料(2〜3人分、直径16cmのスキレット1台分)

チーズとチョリソ

  • 溶けるチーズ合わせて200g
  • モントレージャックチーズ(ブロック)(Amazon|楽天)100g
  • モッツァレラチーズ(ピザ用の水分の少ないもの)(Amazon|楽天)100g
  • 簡易チョリソ(下の分量で作る)100g
  • 乾燥オレガノ(Amazon|楽天)小さじ1/4(0.3g)

オアハカチーズやチワワチーズ、アサデロは、日本ではほとんど売られていません。オアハカチーズが通販で手に入れば、200gすべてをそれにすると本場の糸の伸びに近づきます。手に入らなければ、チワワチーズに味の近いモントレージャックと、オアハカチーズと同じ「練って伸ばすチーズ」のモッツァレラを半分ずつ使います。どちらか1種類だけでも作れます。

チーズはできるだけブロックを買って、角切りにします。袋入りのシュレッドチーズは、くっつかないように粉がまぶしてあるので、溶かしたあと早く固まりやすくなります。

簡易チョリソ(作りやすい分量・約250g、2回分)

メキシコの生のチョリソは、日本ではなかなか手に入りません。豚ひき肉に乾燥唐辛子と酢を混ぜれば、家庭でも作れます。

  • 豚ひき肉(脂の多いもの。あれば粗挽き)200g
  • グアヒージョ(乾燥唐辛子)(Amazon|楽天)2本(約10g)
  • アンチョ(乾燥唐辛子)(Amazon|楽天)1本(約10g)
  • りんご酢、または米酢(Amazon|楽天)大さじ3(45ml)
  • にんにく1片(5g)
  • 塩小さじ1/2(3g)
  • パプリカパウダー(Amazon|楽天)小さじ1(2g)
  • 乾燥オレガノ(Amazon|楽天)小さじ1/2(0.5g)
  • クミンパウダー(Amazon|楽天)小さじ1/4(0.5g)
  • 粗挽き黒こしょう(Amazon|楽天)小さじ1/4(0.5g)
  • クローブ(ホール。あれば)(Amazon|楽天)1粒

一緒に食べるもの

  • 小麦粉トルティーヤ(Amazon|楽天)大きいものは半分に切る6〜8枚
  • シラントロ(パクチー)みじん切り大さじ1(好みで)
  • サルサ・ロハ作り方は「食べ方」の節のリンクから1/2カップ(約120g)
  • ライムくし形切り。好みで1/2個

道具

  • 小さめの鋳鉄スキレット(直径16cm前後):チョリソを炒めて、そのままオーブンに入れ、食卓に出します。鋳鉄は厚くて熱をためるので、食卓でもチーズが冷めにくくなります(Amazon|楽天)
  • ミキサー、またはミルサー(簡易チョリソを作るとき):戻した唐辛子を酢と一緒にペーストにします(Amazon|楽天)
  • アルミホイル:トルティーヤを包んでオーブンで温めます
  • 鍋敷きとミトン:オーブンから出したスキレットは、持ち手まで熱くなっています

作り方

  1. 唐辛子を戻す(簡易チョリソを作るとき)

    グアヒージョとアンチョのへたを取り、縦に裂いて種を出す。熱湯に浸して20〜30分おき、やわらかく戻す。

  2. チョリソを混ぜる

    戻した唐辛子の水けを切り、酢、にんにく、塩、パプリカ、オレガノ、クミン、黒こしょう、クローブと一緒にミキサーでなめらかなペーストにする。回りにくいときは、戻し汁を大さじ1ずつ足す。ボウルに豚ひき肉とペーストを入れ、手でよく混ぜる。ラップをして冷蔵庫で1時間〜一晩おき、味をなじませる。100gを使い、残りは冷凍する。

  3. オーブンを予熱し、チーズを切る

    オーブンを190〜200℃に予熱する。チーズを1.5cm角に切る。トルティーヤを重ねてアルミホイルで包んでおく。

  4. チョリソを炒める

    スキレットを中火にかけ、チョリソ100gを入れる。へらでほぐしながら6〜8分、ピンク色のところがなくなり、ところどころカリッとするまで炒める。肉から赤い脂がたっぷり出てくる。

  5. 脂を取り分ける

    チョリソをキッチンペーパーを敷いた皿に取り出す。スキレットには赤い脂を小さじ1〜2だけ残し、残りは捨てる。脂が少ないときは、そのままでよい。

  6. チーズを敷く

    火を止め、スキレットにチーズを平らに敷き詰める。上にチョリソを散らす。

  7. オーブンで焼く

    スキレットとホイルで包んだトルティーヤを一緒にオーブンに入れ、8〜12分焼く。チーズが全部溶けて、縁がふつふつと泡立ったらすぐに取り出す。焼きすぎると油が分離するので、焼きっぱなしにしない。表面に焼き色をつけたいときは、オーブントースターに移して1〜2分焼く。

  8. 熱いうちに食べる

    スキレットを鍋敷きにのせて食卓に出し、オレガノとシラントロを散らす。チーズとチョリソをフォークですくってトルティーヤにのせ、サルサ・ロハをかけて巻く。チーズが冷めて固まる前に食べる。

料理科学:チーズが糸を引く仕組み

チーズは、カゼインの網目でできている

チーズは、牛乳のたんぱく質「カゼイン」がつながり合った網の中に、脂肪と水分が閉じこめられたものです。この網をつなぎとめる「のり」の役目をしているのが、カルシウム(リン酸カルシウム)です。

カルシウムがどれだけ網に残っているかは、チーズの酸っぱさ(pH)で決まります。pHが6.3前後と酸味が弱いチーズは、カルシウムがしっかり残っていて、網がかたく、溶けにくくなります。pH5.2〜5.4くらいまで酸っぱくなると、カルシウムの一部が網から外れて、網がほどよくゆるみます。このあたりのチーズが、いちばんよく溶けて、よく伸びます。pH4.6前後まで酸っぱくなると、今度はカルシウムがほとんど抜けてカゼインどうしが固まり、温めても溶けません。

オアハカチーズやアサデロ、モッツァレラのような「練って伸ばすチーズ」は、作る途中でチーズのもとを酸っぱくして網をゆるめてから、熱いお湯やホエイの中で練って伸ばします。モッツァレラの場合は、pH5.0〜5.3ほどまで酸っぱくしてから、70〜80℃くらいのお湯で練ります。伸ばすたびに、カゼインが同じ向きにそろった長い繊維になっていきます。溶かしたときにこの繊維がちぎれずにすべり合うので、長い糸になります。

糸を引くには、網がつながっていることが必要です。長く熟成させたチーズは、カゼインが細かく分解されているので、溶けやすくても糸は引きません。ケソ・フンディードに、熟成の進んだチェダーではなく、若い白いチーズを使うのはこのためです。

冷めると固まるので、熱いうちに食べる

チーズがいちばんよく伸びるのは、溶けたチーズがだいたい55〜65℃のときです。それより冷めると、カゼインの網がかたくなって伸びなくなります。ケソ・フンディードは、食卓に出してから少しずつ冷めていき、冷めるほど糸が切れやすく、ゴムのようにかたくなっていきます。

本場で小さな器に入れてぐつぐつのまま出すのも、手順8で「固まる前に食べる」と書いたのも、このためです。厚い鋳鉄のスキレットは熱をたくさんためておけるので、薄い器より長く温かさが続きます。2〜3人で食べきれる小さなスキレットを使うのは、冷める前に食べきれる量にするためでもあります。

焼きすぎると油が分離する

チーズを焼きすぎると、表面に油が浮き、チーズがかたく縮んでしまいます。チーズは、溶けて流れ出すと同時に、網の中の脂肪を外に出します。溶けて流れるほど、出てくる脂肪も多くなります。さらに熱を加え続けると、カゼインの網がくずれ、脂肪をつなぎとめておけなくなります。料理家リック・ベイレスも、チーズを熱しすぎると、かたく油っぽく、筋っぽくなると注意しています。熟成の進んだチーズほど、溶かしたときに脂肪が分かれ、かたまりができやすいことも、食べ比べの実験で確かめられています。

手順7で「溶けたらすぐに取り出す」のは、このためです。チーズを角切りにしておくと、ゆっくりむらなく溶けて、なめらかに仕上がります。手順5でチョリソの脂を少しだけ残して捨てるのも、器の中の油の量を増やしすぎないためです。

チョリソの脂が赤いのは、唐辛子の色素が油に溶けるから

チョリソを炒めると、出てくる脂が真っ赤になります。パプリカなど赤い唐辛子の色は、カプサンチンやカプソルビンといった「カロテノイド」の仲間の色素によるものです。この色素は油に溶け、水にはほとんど溶けません。パプリカから取り出した色素が、ソーセージやチーズなどの脂の多い食品の色づけに使われているのも、油によく溶けるからです。

鋳鉄のスキレットで炒めたぽろぽろのチョリソ。底に赤い脂がたまっている

チョリソを炒めると、肉から溶け出た脂に唐辛子の色素が移り、赤い油になります。手順5でこの赤い脂を小さじ1〜2だけスキレットに残すと、チーズの底や縁がほんのり赤く色づき、唐辛子の香りもチーズに移ります。

チョリソに使うアンチョやグアヒージョなど、メキシコの乾燥唐辛子の名前と戻し方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

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本場との違い

  • チーズ:本場は、チワワチーズやアサデロ、オアハカチーズといったメキシコの白いチーズを使います。日本では手に入りにくいので、味の近いモントレージャックと、同じ「練って伸ばすチーズ」のモッツァレラで代用しています。アメリカのレシピでも、モントレージャックやモッツァレラはよく代わりに使われます。アサデロやオアハカチーズほどの糸の伸びは出にくくなります。
  • チョリソ:本場のメキシコの生チョリソは、日本ではほとんど売られていません。簡易チョリソは、豚ひき肉に乾燥唐辛子と酢、スパイスを混ぜて冷蔵庫でなじませる作り方で、本場の生チョリソと同じ考え方です。ただし本場のものは、腸に詰めて数日つるして熟成させたり、マジョラムやタイム、オールスパイスなど、もっと多くのスパイスを使ったりするので、香りの深さは少し違います。スペインの乾燥チョリソや、日本の辛いソーセージで代用することもできますが、ひき肉をほぐして炒めるメキシコのチョリソとは食感も香りも別物になります。
  • 器と焼き方:本場では、浅い土鍋や耐熱の器で溶かしたり、炭火の網の上で溶かしたりします。家庭では、チョリソを炒めたスキレットをそのままオーブンに入れます。
  • お酒の炎:レストランでは、強いお酒をかけて火をつける「ケソ・フラメアード」もありますが、家庭では火事ややけどの危険があるので、この記事ではオーブンで焼くだけにしています。

食べ方

  • トルティーヤに巻いて:いちばんの定番です。フォークでチーズをすくってトルティーヤにのせ、サルサをかけて巻きます。テキサスのケソのように、チップスをつけて食べる料理ではありません。チーズがかたく重いので、チップスでは折れてしまいます。
  • サルサを添えて:焼いたトマトの香ばしいサルサ・ロハや、酸味のあるサルサが、こってりしたチーズとチョリソによく合います。

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保存

  • ケソ・フンディード:焼いたらその場で食べきるのがおすすめです。残ったら冷蔵で翌日までに。オーブンかオーブントースターで温め直すと溶けますが、焼きたてほどは糸を引かず、油も分離しやすくなります
  • 簡易チョリソ(生):冷蔵で2日程度。使わない分は100gずつラップで平たく包み、冷凍で1か月程度。冷蔵庫で解凍してから炒めます。じゃがいもや卵と炒めてタコスの具にするのもおすすめです

もっと知りたい人へ

チーズが溶ける仕組みや、たんぱく質と脂肪の科学を詳しく知りたい人には、料理科学の定番の本があります。

マギー キッチンサイエンス(ハロルド・マギー『On Food and Cooking』の日本語版)(Amazon|楽天)

メキシコの家庭料理とサルサを本場の作り方で学びたい人には、リック・ベイレスの本があります。

Rick Bayless's Mexican Kitchen(リック・ベイレス)(Amazon)

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。