黒い皿に盛った、表面が細かい泡状に膨らんだクエリート(パリパリに焼いた豚の皮)。横に石のすり鉢に入った、刻んだにんにくとオイルのマリネ
中南米・カリブ

家庭のオーブンで作るペルニル

地域
プエルトリコ
分量
6〜8人分
公開

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ペルニルは、プエルトリコのクリスマスに欠かせない豚肉のローストです。皮付きの豚の塊肉に、たっぷりのにんにくとオレガノ、アドボという調味塩をすり込んで一晩おき、オーブンで何時間もかけて焼き上げます。肉はフォークでほぐれるほどやわらかく、表面の皮は「クエリート」と呼ばれる、ぷくぷくに膨らんだパリパリの皮になります。

低い温度でじっくり焼いてから、最後に高温で皮を一気に膨らませる。この2段階の焼き方なら、家庭のオーブンでも本場と同じクエリートが作れます。皮付きの豚肉が手に入らないときの、皮なしの作り方も書いておきます。

本場のペルニルとは

ペルニル(pernil)は、マリネした豚のもも肉や肩肉の塊を、低温で長い時間かけて焼いた料理です。「ペルニル・アサード」「ペルニル・アル・オルノ(オーブン焼きのペルニル)」とも呼ばれます。プエルトリコのほか、ドミニカ共和国、キューバ、コロンビア、ベネズエラ、エクアドルでも食べられています。

クリスマスのごちそう

プエルトリコでは、ペルニルはクリスマスの食卓の主役です。骨と皮が付いたままの塊肉を前の日にマリネし、当日は何時間もかけて焼きます。肉は骨から自然に外れるほどやわらかくなり、皮ははがして小さく切り分け、みんなで分け合います。

一緒に並ぶのは、「アロス・コン・ガンドゥーレス」というキマメ(ガンドゥーレス)と豚肉の炊き込みご飯や、バナナの葉で包んだ「パステレス」です。アロス・コン・ガンドゥーレスは、ロースト・ポークと並ぶプエルトリコの国民食とされ、特にクリスマスの時期によく作られます。「アロス・コン・ガンドゥーレス、ペルニル、パステル」の組み合わせは、プエルトリコの代表的なひと皿です。

一番人気はクエリート

ペルニルで一番取り合いになるのが、パリパリに焼けた皮、クエリート(cuerito)です。スペイン語で「皮」を意味するクエロ(cuero)に、「小さな」という意味の語尾がついた言葉です。焼き上がったら皮をはがし、全員に行き渡るように小さく切り分けるのが本場の流儀です。

マリネはにんにく・オレガノ・アドボ

ペルニルの味つけは、にんにく、乾燥オレガノ、黒こしょう、オリーブオイル、そして「アドボ」です。アドボは、スペイン語の「アドバール(漬け込む・味つけする)」から来た言葉で、プエルトリコでは肉や魚にすり込む調味塩を指します。

アドボには2種類あります。つぶしたにんにく、オリーブオイル、塩、こしょう、オレガノ、柑橘の果汁や酢を合わせた「アドボ・モハード(ぬれたアドボ)」と、にんにくの粉や玉ねぎの粉、塩、こしょう、オレガノを混ぜた「アドボ・セコ(乾いたアドボ)」です。島でよく使われているのは、作り置きができて長持ちする乾いたアドボのほうで、スーパーには市販の調合品が並びます。家庭ではこのアドボに、生のにんにくをたっぷり潰して混ぜ、塊肉に切り込みを入れて奥まで詰め込みます。

キューバのモホポークとの関係

隣の島キューバにも、よく似た豚肉のローストがあります。「モホ」と呼ばれるマリネ液に漬けて焼く、いわゆる「モホポーク(レチョン・アサード)」です。キューバのモホは、にんにくとオリーブオイル(またはラード)に、伝統的にはビターオレンジ(サワーオレンジ)の果汁を合わせたもので、豚肉のマリネに使われます。キューバでもクリスマス・イブの夕食「ノチェブエナ」の主役は豚のローストで、皮付きの豚肩肉を柑橘とにんにくのマリネに一晩漬けて焼くレシピは、キューバ式の「ペルニル・アサード・コン・モホ」とも呼ばれます。

ざっくり言えば、キューバ式は柑橘の酸っぱさが効いたマリネ、プエルトリコ式はにんにくとオレガノ、アドボの塩気が主役のマリネです。どちらも残った肉をサンドイッチにする楽しみがあり、キューバサンドの具もこのローストポークです。

ペルニルのレシピ:材料(6〜8人分)

豚肉(皮付き)

  • 皮付き豚肩肉(または皮付き豚もも肉)のブロック骨付きなら2.5kg2kg

マリネ

  • にんにく10〜12片・50〜60g1玉
  • 塩肉の重さの約0.8%16g(大さじ1弱)
  • アドボ(市販の調合品)(Amazon|楽天)楽天は海外からの取り寄せのため高価です大さじ1(約8g)
  • オレガノ(乾燥)(Amazon|楽天)大さじ1(3g)
  • 粗挽き黒こしょう(Amazon|楽天)小さじ2(4g)
  • オリーブオイル大さじ2(24g)
  • 白ワインビネガー(または米酢)大さじ1(15ml)
  • サゾン(あれば)(Amazon|楽天)楽天は海外からの取り寄せのため高価です小さじ1

アドボの代わりに、塩を5g増やし、ガーリックパウダー小さじ1/2(Amazon|楽天)とオニオンパウダー小さじ1/4(Amazon|楽天)を加えてもかまいません。市販のアドボは塩が主な成分なので、アドボを使うときは塩を増やしすぎないでください。サゾンは、アナトー(ベニノキの種)の色素で肉をオレンジ色に色づける調味料です。なくても作れます。

皮用

  • 塩小さじ1(5g)

皮なしで作る場合

  • 豚肩ロースのブロック(脂身付き)(Amazon|楽天)1kgを2本でもよい2kg
  • マリネの材料上と同じ

付け合わせ(好みで)

  • アロス・コン・ガンドゥーレス、またはご飯
  • アボカドの薄切り、ポテトサラダ

皮付き豚肉の入手について

日本のスーパーで売られている豚肉は、ほとんどが皮を取り除いたものです。皮付きの豚肉は、通販の精肉店で「皮付き豚肩肉」「皮付き豚もも肉」「皮付き豚バラ(沖縄料理の三枚肉用)」として売られています。肩やももの皮付きブロックが見つからないときは、皮付きの豚バラブロックでも同じ手順でクエリートが作れます(バラは脂が多いので、焼き時間を2〜3割短くします)。

皮付き肉が手に入らないときは、脂身付きの豚肩ロースで「皮なしの作り方」を選んでください。クエリートはできませんが、脂身がこんがり焼けた、ほろほろのペルニルになります。

道具

  • 料理用温度計:ほぐれるやわらかさになったかを、中心温度で確かめます(Amazon|楽天)
  • 置いたまま測れるワイヤレス温度計があると、長時間の焼き加減を扉を開けずに見られます(Amazon)
  • 天板と焼き網:肉を網にのせ、溶けた脂や肉汁を下に落とします(Amazon|楽天)
  • すり鉢、またはモルカヘテ:にんにくを潰します(Amazon|楽天)
  • よく切れる小型の包丁(切り込み用)
  • アルミホイル

作り方

皮付きで作る

  1. にんにくを潰す

    にんにくの皮をむき、すり鉢に入れて塩16gと一緒に棒でつき、ペースト状にする。5〜10分おいてから、アドボ、オレガノ、黒こしょう、オリーブオイル、酢、サゾンを加えてよく混ぜる。

  2. 皮に格子の切り目を入れる

    豚肉の皮の水けをキッチンペーパーでふく。よく切れる包丁で、皮に1.5〜2cm間隔の格子状の切り目を入れる。皮と脂身だけを切り、下の赤身まで刃を入れない。

  3. 肉に切り込みを入れてマリネを詰める

    肉を裏返し、皮のない面と側面に、包丁で深さ3〜4cmの切り込みを10〜15か所入れる。切り込みにマリネを指で押し込み、残りを皮のない面と側面全体に塗る。皮の上にはマリネを付けない。付いたらふき取る。

  4. 皮を乾かす

    皮を上にして網をのせたバットに置き、皮に塩5gをすり込む。ラップをせずに冷蔵庫で12〜24時間おいて、皮を乾かす。

  5. 低温で焼く

    オーブンを150〜160℃に予熱する。天板に網をのせ、皮を上にして肉を置く。天板に水200mlを張り(脂が焦げて煙が出るのを防ぐ)、3〜4時間焼く。途中で天板の水がなくなったら足す。皮が先に色づきすぎたら、皮の上にだけアルミホイルをかぶせる。

  6. 中心温度を確かめる

    肉のいちばん厚い部分の中心に温度計を刺す。85〜90℃になり、横から肉を押すとほろりと崩れるくらいになっていれば、低温焼きは終わり。足りなければ20〜30分ずつ追加で焼く。

  7. 高温で皮を膨らませる

    天板の水を捨てる。オーブンを最高温度(230〜250℃)に上げ、皮が全体にぷくぷくと膨らんで、指で叩くとコツコツと乾いた音がするまで15〜30分焼く。焦げやすい角はアルミホイルで覆う。膨らみが足りない部分があれば、その部分が上を向くよう、丸めたアルミホイルを肉の下にかませて傾ける。

  8. 休ませる

    取り出して、20〜30分休ませる。皮をはがして食べやすい大きさに切り分け、肉は大きめにほぐすか、厚めに切る。天板に落ちた肉汁は、脂をすくって肉にかける。

皮なしで作る

  1. マリネを作る

    皮付きの手順1と同じ。

  2. 脂身に切り目を入れる

    脂身に1.5〜2cm間隔の格子状の切り目を入れる(赤身まで切らない)。

  3. マリネを詰める

    赤身の面に切り込みを入れてマリネを詰め、脂身を含む全体に残りを塗る。ラップをして冷蔵庫で12〜24時間おく。

  4. ホイルをかぶせて低温で焼く

    オーブンを150〜160℃に予熱する。脂身を上にして網にのせ、天板に水200mlを張る。皮がない分、表面が乾いて硬くなりやすいので、最初の2時間はアルミホイルをふんわりかぶせて焼く。

  5. ホイルを外して焼く

    ホイルを外して、中心温度が85〜90℃になるまで、さらに1〜2時間焼く(1kgのブロック2本なら、合計2時間30分〜3時間が目安)。

  6. 焼き色をつける

    オーブンを220〜230℃に上げ、脂身にこんがり焼き色がつくまで10〜15分焼く。マリネのにんにくは焦げやすいので、色づいてきたら早めに取り出す。

  7. 休ませる

    20〜30分休ませて、ほぐすか切り分ける。

料理科学:皮を膨らませる2段階焼きと、にんにくの香り

皮の正体はコラーゲン

豚の皮は、およそ3割がコラーゲンというたんぱく質でできています。コラーゲンは、硬いひも状の繊維が束になったものです。生の皮や、低い温度で短時間焼いただけの皮が、硬くてゴムのように噛み切れないのはこのためです。

コラーゲンの繊維は、70℃台の後半あたりからほどけ始め、水を含んだゼラチンに変わっていきます。ペルニルを150〜160℃という低めの温度で何時間も焼くのは、肉の中だけでなく、皮のコラーゲンもゆっくりゼラチンに変えておくためです。

コラーゲンがゼラチンに変わる仕組みは、こちらの記事で詳しく解説しています。

コラーゲンとゼラチン:かたい肉がほろほろになるまでかたい牛すねやブリスケット、豚の肩肉が、長く加熱するとほろほろになるのはなぜか。コラーゲンが縮む温度とゼラチンに変わる温度と時間、しっとり感の正体、湿熱と乾熱、ストール、圧力鍋との違いが分かります。

低温のあとに高温で、皮が膨らむ

ただし、低温で焼くだけでは、皮はやわらかくぶよぶよのままです。パリッとさせるのに必要なのが、手順7の高温です。

高温にすると、皮の中に閉じこめられていた水分が一気に水蒸気になります。水蒸気は、ゼラチンになってやわらかく伸びるようになった皮の中で、小さな泡を膨らませます。泡の壁は膨らみながら薄くなり、そのまま乾いて固まります。スポンジケーキがオーブンの中で膨らんで固まるのと同じ仕組みで、これが「ぷくぷく」の正体です。薄い泡の壁がたくさん集まっているので、クエリートは軽く、パリパリと砕けます。

天板の中で焼き上がった豚の塊肉。皮全体が細かい泡状に膨らみ、ところどころ黒く焦げている

逆に、最初から高温で焼くと、皮のたんぱく質が縮んで硬くなるのが先に進み、ゼラチンが十分にできる前に固まってしまいます。こうなると皮は膨らまず、革のように硬くなります。低温で先にゼラチンを作り、あとから高温で膨らませる。この順番が大事です。

皮を乾かし、マリネを皮に付けない理由

手順4で、皮に塩をしてラップをせずに一晩冷蔵庫に置くのは、皮の表面を乾かしておくためです。表面がぬれていると、熱は水を蒸発させることに使われ、皮の温度が上がりません。表面を乾かしておくと、高温にしたときに皮が早く熱くなり、パリッと仕上がりやすくなります。本場でも、マリネした塊肉をふたをせずに冷蔵庫に入れ、表面を乾かしておくやり方があります。

マリネを皮の上に塗らないのは、皮をぬらさないためと、にんにくが高温で焦げるのを防ぐためです。本場のレシピでも、高温で焼く前に、皮の上に残ったマリネを取り除きます。肉を網にのせて焼くのも、溶けた脂や肉汁を下に落として、皮が脂の中で煮えないようにするためです。

にんにくは潰して香りを立たせる

にんにくの香りのもとは、「アリシン」という成分です。ところが、丸のままのにんにくには、アリシンはほとんど含まれていません。

にんにくの細胞の中には、アリシンのもとになる「アリイン」という成分と、それを分解する「アリイナーゼ」という酵素が、別々の場所にしまわれています。にんにくを切ったり潰したりして細胞が壊れると、両者が出会って反応が進み、アリシンができます。細胞をたくさん壊すほど、アリシンは多くなり、香りと辛みが強くなります。丸のまま、薄切り、みじん切り、すりおろしやペーストの順に、香りは強くなります。

手順1で、にんにくを丸ごとではなく塩と一緒にすり鉢でつき、ペーストにするのはこのためです。塩の粒がにんにくの細胞を壊す手助けをします。潰してすぐではなく5〜10分おくのは、潰したあとも反応がしばらく続くためです。

そのあとで酢を加えるのにも理由があります。アリイナーゼは、強い酸の中では働かなくなってしまいます。先に酵素が働く時間をとってから酢を加えれば、にんにくの香りをしっかり引き出せます。

アリシンは不安定な成分で、時間がたつと、ほかの硫黄を含む香り成分に変わっていきます。一晩マリネし、何時間も焼くあいだに、にんにくの香りは生のとがった辛みから、肉になじんだまろやかな香りに変わっていきます。

ほぐす料理なので、中心温度は高めに

ペルニルは、肉をほぐして食べる料理です。肩肉やもも肉には、筋肉の繊維を束ねる硬いコラーゲンがたくさんあります。皮と同じように、このコラーゲンを時間をかけてゼラチンに変えると、肉はほろほろとほぐれるやわらかさになります。本場のレシピでは、中心温度が80℃台になるまで焼くのが目安です。この記事では、ほぐれやすさを優先して85〜90℃としています。

豚肉は、中まで十分に火を通して食べる肉です。厚生労働省は、豚肉にはE型肝炎ウイルスやサルモネラなどの食中毒菌、寄生虫のリスクがあるとして、中心部を75℃で1分以上加熱することを目安にしています。ペルニルの焼き上がりの温度はこれを大きく上回るので、温度計で85〜90℃を確かめれば安心です。

中心温度計の選び方と正しい測り方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

中心温度計:塊肉を焼くときにいちばん大事な道具塊肉の火の通りを確かめる中心温度計の解説。オーブンの温度のずれや余熱で焼き時間が当てにならない理由、鶏肉・豚肉・牛肉・BBQの中心温度の目安、温度計の種類と選び方、正しい刺し方と氷水での校正が分かります。

本場との違い

  • 肉の部位と骨:本場では骨付き・皮付きの肩肉やもも肉を丸ごと使います。日本の家庭のオーブンに入る大きさと、手に入りやすさを考えて、2kg前後のブロックにしています。
  • 皮なしの作り方:皮付き肉が手に入らないときは、脂身付きの豚肩ロースで作ります。クエリートはできませんが、味つけと焼き方は本場と同じです。
  • アドボ:本場では市販のアドボを使う家庭が多いので、通販で手に入るプエルトリコ式のアドボを使っています。手に入らなければ、塩とガーリックパウダー、オニオンパウダーで代用できます。
  • オレガノ:プエルトリコのアドボには、地中海のオレガノとは別の、オレガノに似た香りの植物が使われることもあります。家庭版では手に入りやすい乾燥オレガノを使っています。

食べ方

本場のクリスマスと同じように、アロス・コン・ガンドゥーレスと一緒に盛りつけ、クエリートをのせて食べます。アボカドの薄切りやポテトサラダもよく添えられます。

  • ご飯と一緒に:アロス・コン・ガンドゥーレスがなければ、白いご飯でもおいしく食べられます。天板に落ちた肉汁をかけてください。
  • サンドイッチに:残ったペルニルは、パンにはさんでサンドイッチにします。キューバサンドのように、ハム、チーズ、ピクルス、イエローマスタードと合わせるのも定番です(Amazon|楽天)(Amazon|楽天)。
  • タコスに:ほぐした肉を温めたコーントルティーヤにのせ、サルサを添えてタコスにしても合います(Amazon|楽天)。

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保存

  • 冷蔵:肉は肉汁と一緒に保存容器に入れて3日程度。食べるときは肉汁ごと温め直す
  • 冷凍:ほぐした肉を小分けにして、1か月程度
  • クエリート:時間がたつとしけるので、焼いた日に食べきるのがおすすめ。しけたら、200℃のオーブンかオーブントースターで数分焼き直すとパリッと戻ります

もっと知りたい人へ

肉のコラーゲンが加熱で変わる仕組みや、にんにくの香りの化学を詳しく知りたい人には、料理科学の定番の本があります。

マギー キッチンサイエンス(ハロルド・マギー『On Food and Cooking』の日本語版)(Amazon|楽天)

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。