
家庭のオーブンで作るチチャロン
この記事はAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンクを含みます。
チチャロンは、豚の皮や皮付きのバラ肉をカリカリに揚げた、メキシコをはじめ中南米で愛されている料理です。皮付きの豚バラで作ると、皮はぷくぷくに膨らんでバリバリに、その下の脂と肉はジューシーに仕上がります。一口大に切って、ワカモレをたっぷりつけて食べる「チチャロン・コン・ワカモレ」は、2023年ごろに海外で話題になった食べ方です。
本場では大鍋の油やラードで揚げますが、下ゆでしてから皮を乾かし、オーブンの温度を2段階に分ければ、家庭のオーブンでも油で揚げずに、バリバリの皮が作れます。
本場のチチャロンとは
チチャロン(chicharrón)は、豚の皮やバラ肉を揚げた料理の総称です。生まれはスペインで、今もアンダルシア地方やカナリア諸島でよく食べられています。スペインのほかの地方では「トレスノ」と呼ばれます。中南米の国々やフィリピンなどでも食べられ、国ごとに違うチチャロンがあります。
メキシコの2つのチチャロン
メキシコは、豚の皮の揚げ物の世界有数の生産国で、消費国でもあります。メキシコの料理事典は、チチャロンを「乾かして揚げた豚の皮」と定義しています。
いちばん一般的なのは、豚の皮だけで作る「チチャロン・デ・セルド(豚のチチャロン)」です。皮をゆでてやわらかくし、脂を抜いてから表面を削って薄くし、ゆっくり乾かしてカチカチにします。これをラードや熱い油で揚げると、皮が大きく膨らんで、金色のサクサクのチチャロンになります。市場や肉屋には大きな板のようなチチャロンが並び、そのままつまんだり、緑や赤のサルサで煮込んでタコスにしたりします。
もうひとつが、バラ肉で作る「チチャロン・デ・バリガ(バラ肉のチチャロン)」です。皮の下に脂と肉の層が付いたまま揚げるので、皮はバリバリ、中はジューシーに仕上がります。肉を残すのは、買う人がそれを求めるからだといいます。北部のモンテレイには、豚ののど肉(パパダ)で作る、厚くてジューシーなチチャロンもあります。この記事で作るのは、皮付きの豚バラを使うバラ肉のチチャロンです。
ワカモレと一緒に食べる
メキシコでは、チチャロンはサルサや豆、ワカモレと一緒によく食べられます。中部の「タコス・プラセロス」は、トルティーヤにチチャロン、ノパル(ウチワサボテン)、豆、白いチーズ、ワカモレなどをのせる、市場の定番のタコスです。料理家リック・ベイレスも、刻んだチチャロンをワカモレにのせる「ワカモレ・ベルデ・コン・チチャロン」をテレビ番組で紹介しています。
バラ肉のチチャロンを一口大に切り、ワカモレにつけて食べる「チチャロン・コン・ワカモレ」は、英語圏のレシピサイトで「2023年に大流行した料理」と紹介されています。バリバリの皮と脂の多い肉に、なめらかで酸味のあるワカモレがよく合います。
国によって違うチチャロン
- ペルー:豚肉を水と塩でゆで、水がすっかり蒸発したら、肉から溶け出た自分の脂で揚げ焼きにします。丸いパンにチチャロンと揚げたさつまいも、赤玉ねぎのサラダ「サルサ・クリオージャ」をはさんだ「パン・コン・チチャロン」は、首都リマの日曜日の朝ごはんの定番です。
- コロンビア:皮に肉が付いたまま揚げた「チチャロン・コチョ」が人気です。豆やご飯、卵、チョリソ、アボカドなどを一皿に盛る「バンデハ・パイサ」には欠かせません。
- プエルトリコ:バヤモン市は「チチャロンの街」と呼ばれています。揚げた青いバナナを潰す「モフォンゴ」にもチチャロンを混ぜます。
チチャロンのレシピ:材料(4人分)
チチャロン
皮付きの豚バラは、日本のスーパーではほとんど見かけません。通販の精肉店で、沖縄料理の「三枚肉」用として冷凍で売られています。皮・脂・赤身が層になった、厚さ3〜4cmほどのブロックが使いやすいです。
一緒に食べるもの
道具
- 大きめの鍋(直径24cm以上):豚バラのブロックを丸ごとゆでます
- 天板と焼き網:肉を網にのせ、溶けた脂を下に落とします(Amazon|楽天)
- 竹串、またはアイスピック:皮に細かい穴をあけます
- よく切れる包丁:バリバリの皮を一口大に切り分けます
作り方
解凍する
冷凍の豚バラは、焼く2日前に冷蔵庫に移し、24時間ほどかけて解凍する。
下ゆでする
鍋に豚バラを入れ、水、塩20g、にんにく、ローリエ、黒こしょうを加えて強火にかける。沸騰したらアクを取り、ふつふつと静かに煮立つくらいの弱火で45〜60分ゆでる。肉が浮くときは、皿をのせて沈める。赤身に竹串がすっと通り、皮がやわらかくなっていれば終わり。皮が崩れるほど煮すぎない。
皮を乾かす
肉を取り出し、キッチンペーパーで水けをよくふく。網をのせたバットに皮を上にして置き、粗熱が取れたら、ラップをせずに冷蔵庫で12〜24時間おいて皮を乾かす。
切って穴をあける
冷えて締まった肉を、幅4〜5cmの棒状に切る。皮の面に竹串で細かい穴をたくさんあける。皮と脂だけを刺し、赤身まで刺さない。皮に塩3gをすり込む。
低温で焼く
オーブンを150〜160℃に予熱する。アルミホイルを敷いた天板に網をのせ、皮を上にして肉を並べる。皮が平らになるように、傾くものは丸めたアルミホイルを下にかませる。50〜60分焼いて、脂を溶かし出しながら皮をさらに乾かす。
脂を取り分ける
天板を取り出し、たまった脂を耐熱の容器に移す。高温で焼くときに、脂が煙を上げないようにするため。取り分けた脂は、ラードの代わりに炒め物などに使えます。
高温で皮を膨らませる
オーブンを最高温度(230〜250℃)に上げ、皮が全体にぷくぷくと膨らみ、竹串で叩くとコツコツと硬い音がするまで15〜30分焼く。5〜10分ごとに天板の向きを変える。膨らんだものから先に取り出す。焦げそうな角はアルミホイルで覆う。
休ませて一口大に切る
網の上で10分休ませる。皮を下にしてまな板に置き、包丁の刃元で皮を押し切るようにして、2.5〜3cm角の一口大に切る。
盛りつける
器に盛り、ワカモレとライムを添える。皮が熱くバリバリのうちに、ワカモレをたっぷりつけて食べる。
料理科学:皮が膨らんでバリバリになる仕組み
下ゆでで、皮のコラーゲンをゼラチンに変える
豚の皮は、およそ3割がコラーゲンというたんぱく質でできています。コラーゲンは、硬いひも状の繊維が束になったものです。生の皮や、高温で急に焼いた皮が、革のように硬く噛み切れないのはこのためです。
コラーゲンの繊維は、70℃台の後半あたりからほどけ始め、水を含んだやわらかいゼラチンに変わっていきます。手順2の下ゆでは、皮のコラーゲンをゼラチンに変える工程です。豚の皮を揚げて膨らませる研究では、乾かす前にゆでた皮のほうが、ゆでなかった皮よりよく膨らみ、硬さも少なくなりました。研究者たちは、ゆでている間にできるゼラチンが、膨らむために大事だと考えています。メキシコの豚皮のチチャロンも、最初に皮をゆでるところから始めます。
下ゆでには、ほかにも役目があります。肉の中まで火が通ってやわらかくなり、塩味が入ります。脂の一部も溶け出すので、あとのオーブンの時間を短くできます。
コラーゲンがゼラチンに変わる温度と時間は、こちらの記事で詳しく解説しています。
コラーゲンとゼラチン:かたい肉がほろほろになるまでかたい牛すねやブリスケット、豚の肩肉が、長く加熱するとほろほろになるのはなぜか。コラーゲンが縮む温度とゼラチンに変わる温度と時間、しっとり感の正体、湿熱と乾熱、ストール、圧力鍋との違いが分かります。
乾かしすぎず、ぬれすぎず
手順3で、ゆでた肉をラップをせずに一晩冷蔵庫に置くのは、皮を乾かすためです。皮の表面がぬれていると、熱は水を蒸発させるのに使われ、皮の温度が100℃ほどで止まってしまいます。
ただし、カラカラに乾かせばいいわけではありません。料理科学の本『モダニスト・キュイジーヌ』は、チチャロンの皮の水分は多すぎても少なすぎても、熱い油の中できれいに膨らまないとしています。皮の中に、適度な水分が残っていることが大切です。下ゆでして水を含んだ皮を、表面だけ冷蔵庫で乾かすのは、ちょうどこの状態を作るためです。
高温で、皮の水分が一気に水蒸気になる
手順7で一気に温度を上げると、皮の中に残っていた水分が急に水蒸気になります。水蒸気は、ゼラチンになって伸びやすくなった皮の中で、小さな泡をいくつも膨らませます。泡の壁は膨らみながら薄く伸び、熱で乾いてそのまま固まります。スポンジケーキがオーブンの中で膨らんで固まるのと同じ仕組みです。薄い泡の壁がたくさん集まっているので、チチャロンの皮は軽く、バリバリと砕けます。
市販の豚皮のスナックは、乾かした皮を200〜210℃の脂で揚げて作り、皮は5倍ほどに膨らみます。家庭のオーブンで同じように膨らませるには、できるだけ高い温度にし、皮を平らに上に向けて、熱をまんべんなく当てます。手順4で皮に細かい穴をあけておくと、大きな泡が1か所だけ膨らむのを防ぎ、細かい泡が均一にできやすくなります。
逆に、ゆでずに最初から高温で焼くと、ゼラチンができる前に皮のたんぱく質が縮んで硬くなり、膨らまずに革のような皮になってしまいます。先にゼラチンを作り、あとで高温にする。この順番が大事です。海外で話題になったチチャロン・コン・ワカモレのレシピも、皮付きの豚バラをまず45分ほどゆで、低い温度の油で長く揚げてから、最後に高温の油で皮を膨らませています。
同じように豚の皮を高温で膨らませてパリパリに焼く、プエルトリコのペルニルの作り方も紹介しています。
家庭のオーブンで作るペルニルプエルトリコのクリスマスに欠かせない豚肉のロースト、ペルニルを家庭のオーブンで。にんにくとアドボのマリネを詰め、150〜160℃で焼いてから高温で皮を膨らませます。クエリートができる仕組みとにんにくの香りを料理科学で解説します。
本場との違い
- 焼き方:本場は、大鍋のラードや油で揚げます。家庭版は、下ゆでのあとにオーブンで焼くので、大量の油を使わず、油はねもありません。そのぶん、皮を一晩乾かす時間が必要です。
- 部位:メキシコでいちばん一般的なのは、豚の皮だけで作るチチャロンです。皮だけのチチャロンは、ゆでた皮を削ってカチカチになるまで乾かす手間がかかるので、家庭では皮付きの豚バラで作るバラ肉のチチャロンにしています。
- 皮付きの豚肉:日本では皮付きの豚肉はほとんど売られていないので、沖縄料理用の冷凍の三枚肉を使います。
食べ方
いちばんのおすすめは、一口大に切ったチチャロンを、たっぷりのワカモレにつけて食べるチチャロン・コン・ワカモレです。ライムを搾ると、脂の多い肉がさっぱりします。

- タコスに:温めたコーントルティーヤにチチャロンをのせ、ワカモレとサルサを添えます(Amazon|楽天)。
- サルサと一緒に:酸味のあるサルサ・ベルデや、焼いたトマトの香ばしいサルサ・ロハをつけても合います。
チチャロンにつけるワカモレと、サルサ・ベルデ、サルサ・ロハの作り方も紹介しています。
本場ワカモレのレシピアボカド、玉ねぎ、唐辛子、シラントロ、ライム、塩で作るメキシコの本場のワカモレ。溶岩石のすり鉢モルカヘテで粗くつぶします。アボカドが黒くなる仕組みと、ライムが変色を遅らせる理由、種を入れる俗説を料理科学で解説します。
本場サルサ・ベルデのレシピメキシコの緑のサルサ、サルサ・ベルデを、日本でも手に入るトマティーヨの缶詰で。生ならゆでて、缶詰ならそのまま唐辛子やシラントロとミキサーにかけるだけ。酸味のもと、ゆでると色が変わる理由、冷やすととろみが出る仕組みを料理科学で解説します。
本場サルサ・ロハのレシピメキシコの焼いた赤いサルサ、サルサ・ロハを家庭で。トマト、玉ねぎ、にんにく、チレ・デ・アルボルを鉄のフライパンや魚焼きグリルで焦げ目がつくまで焼き、すりつぶします。メイラード反応とカラメル化、焦げと苦みの関係を料理科学で解説します。
同じように豚肉を脂でカリッと仕上げるメキシコのカルニタスもどうぞ。
家庭のオーブンで作るカルニタス(メキシコ式)メキシコ・ミチョアカン州のカルニタスを、ダッチオーブンと家庭のオーブンで。豚肩ロースをラードで煮て、水分が飛んだら表面をカリッと仕上げます。水が温度にブレーキをかける仕組み、ラードの役割、オレンジや牛乳、コーラの効果を料理科学で解説します。
タコスに使うコーントルティーヤと、一緒に食べる豆料理フリホーレス・レフリトスの作り方も紹介しています。
本場コーントルティーヤのレシピメキシコの主食コーントルティーヤを、マサ・アリナと水だけで。トルティーヤプレスで押しのばし、鋳鉄のスキレットで焼けば家庭のコンロでもぷくっと膨らみます。生地を休ませる理由、ひび割れの見分け方、膨らむ仕組みを料理科学で解説します。
本場フリホーレス・レフリトスのレシピメキシコとテキサスの定番の豆料理フリホーレス・レフリトスを、乾燥ピントビーンズから。塩水に浸して煮た豆を、ラードで炒めながら煮汁でのばしてつぶします。塩水で皮がやわらかくなる理由、酸と硬水の影響、でんぷんの糊化を料理科学で解説します。
保存
- 冷蔵:切る前の棒状のまま保存容器に入れて2〜3日程度。皮は時間がたつとしけるので、食べる前に200℃のオーブンかオーブントースターで数分焼き直すとバリッと戻ります
- 冷凍:切る前の状態でラップに包み、1か月程度。冷蔵庫で解凍してから焼き直す
- 切ったチチャロン:皮がしけやすいので、切ったらすぐに食べきるのがおすすめ
もっと知りたい人へ
肉や皮のコラーゲンが加熱で変わる仕組みを詳しく知りたい人には、料理科学の定番の本があります。
マギー キッチンサイエンス(ハロルド・マギー『On Food and Cooking』の日本語版)(Amazon|楽天)
出典
- Wikipedia「Chicharrón」
- Wikipedia「Pork rind」
- México Desconocido「El chicharrón de cerdo, clásico crujiente de la cocina mexicana」
- El Financiero「¿Qué parte del cerdo es el chicharrón?」
- Excélsior「¿Qué es el chicharrón? Conoce cuántos tipos hay en México」
- Time Out México「Chicharrón Norteño, lo mejor de la cocina de Monterrey en la CDMX」
- Rick Bayless「Roasted Tomatillo Guacamole with Crunchy Chicharrón」
- Grumpy's Honeybunch「Chicharron and Guacamole」
- Andina「Chicharrón peruano: deléitate con las variedades regionales de este sabroso potaje」
- Wikipedia(スペイン語)「Pan con chicharrón」
- Truong ほか「Comparison Between Traditional Deep-Oil and Microwave Puffing for Physical and Eating Qualities of Puffed Pork Rind」Kasetsart Journal (Natural Science) 48巻(2014年)
- Modernist Cuisine「Pressure-Cooked Chicharrón」
- ThermoWorks「Slow-Roasted Pork Belly with Chicharrones」
- Riverten Kitchen「Crispy Lechon Kawali (Deep Fry, Air Fry, or Oven)」
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。