
本場フリホーレス・レフリトスのレシピ
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フリホーレス・レフリトスは、煮た豆をラードで炒めながらつぶした、メキシコとテックスメックスの定番の豆料理です。英語では「リフライドビーンズ」と呼ばれます。テキサスのテックスメックス店では、たいていの料理の皿に添えられ、トルティーヤチップスですくって食べるディップにもなります。
缶詰でも手に入りますが、乾燥豆から煮て作ると、香りも口当たりもまるで違います。煮汁ごとつぶしてなめらかに、ラードでこくを出すのがコツです。メキシコ北部とテキサスで使われるピントビーンズで作る、本場のレシピです。
本場のフリホーレス・レフリトスとは
フリホーレス・レフリトス(frijoles refritos)は、豆をやわらかく煮てから、油脂で炒めながらつぶしてペースト状にした料理です。メキシコとテックスメックスの定番で、中南米のほかの国々でも食べられています。豆を煮て、煮汁を切り、つぶし、玉ねぎやにんにくと一緒に少量の脂で炒めます。メキシコではラードを使うことがいちばん多く、これが味を大きく左右します。
いんげん豆は、メキシコを含むメソアメリカで、およそ8000年前に栽培化された作物です。メキシコ中部では、豆は毎食のように食卓に上がります。
「レフリト」は「二度揚げ」ではない
英語の「refried(リフライド)」は「もう一度揚げた」という意味に聞こえますが、豆を2回揚げるわけではありません。スペイン語の接頭辞「re-」には、「くり返し」のほかに「意味を強める」という使い方があり、スペイン王立アカデミーの辞書にも載っています。料理家リック・ベイレスは、レフリトスを「二度揚げではなく、よく炒めた、しっかり炒めた豆」と説明しています。メキシコ料理研究家のダイアナ・ケネディも、「ほとんど水けがなくなるまで、よく炒めた豆」と書いています。
テキサスの古い新聞にも、同じ意味の説明が残っています。言葉の歴史を調べるバリー・ポピックによると、1900年のサンアントニオの新聞に、メニューの一品として「Frijoles Refritos」が出てきます。1903年のフォートワースの新聞は、豆を「熱いラードで、すっかり水けがなくなるまで炒めたものをレフリトスと呼ぶ」と説明しています。一方で、1937年のダラスの新聞はすでに「double fried(二度揚げ)」と書いていて、誤解も古くからありました。
「もう一度炒める」という意味だとする説明もあり、語源の解釈は一つに決まっていません。ただ、確認できた範囲では、実際の作り方は「煮た豆を、脂でしっかり炒める」です。揚げるのではなく、炒めながらつぶします。
北部とテキサスはピントビーンズ
ピントビーンズ(pinto bean)は、ベージュの地に茶色のまだら模様が入ったいんげん豆です。「pinto」はスペイン語で「まだらの、色を塗った」という意味です。メキシコ北部とアメリカ南西部で、いちばん多く作られている豆です。
メキシコ北部では、ピントビーンズを豚肉と一緒に料理することが多く、豚の脂で作るフリホーレスもあります。モンテレイには、なめらかなレフリトスにチーズを混ぜ込む「フリホーレス・マネアドス」があります。テキサスでは、テックスメックス店の料理のほとんどにリフライドビーンズが添えられ、トルティーヤチップスのディップや、ナチョス、ブリトーの具にもなります。
黒いんげん豆の南部:ベラクルスとユカタン
メキシコの南部では、小さくつやのある黒いんげん豆(フリホル・ネグロ)がいちばん好まれています。メキシコ湾に面したベラクルスでは、トウモロコシ生地の軽食「ピカディータ」に、黒豆のレフリトスとサルサをのせるのが定番で、えびをのせることもあります。
ユカタン半島の「フリホル・コラード(こした豆)」は、黒いんげん豆だけで作ります。玉ねぎと、メキシコの香草エパソーテ(オレガノに似た、それよりずっと強い香りの草)と一緒に豆を煮て、煮汁ごとピューレにし、こしながら熱いラードに入れます。好みでハバネロを丸ごと加えて辛みと香りを移します。ユカタンの料理人は、ラードでなければ同じ味にならないと言います。豚肉の焼き物に添えたり、揚げたトルティーヤ料理「パヌーチョ」に塗ったりします。
フリホーレス・レフリトスのレシピ:材料(4〜6人分)
豆を煮る
ピントビーンズは、日本のスーパーではほとんど見かけません。輸入食材店や通販で、アメリカ産やメキシコ産の乾燥豆が手に入ります。見つからなければ、同じいんげん豆の仲間で、まだら模様の似た「うずら豆」で代用できます。
炒めてつぶす
仕上げ
黒いんげん豆で作る場合(ベラクルス・ユカタン風)
日本の「黒豆」は大豆の仲間で、別の豆です。黒いんげん豆は、ブラジル食材店や通販で手に入ります。
道具
- 厚手の鍋(容量4L以上):豆を煮ます。鋳鉄のダッチオーブンなら、弱火でも温度が安定します(Amazon|楽天)
- 鋳鉄スキレット(直径25cm前後):豆を炒めながらつぶします。そのまま食卓に出せます(Amazon|楽天)
- マッシャー:豆をつぶします。木べらの背でもつぶせますが、マッシャーのほうが早くて均一です(Amazon|楽天)
- 穴あきお玉:煮汁を鍋に残して、豆だけをすくいます
- ブレンダー(黒いんげん豆をなめらかにする場合)(Amazon|楽天)
作り方
豆を塩水に浸す
前日に、豆を洗って割れた豆や小石を取り除く。ボウルに水2Lと塩30gを溶かし、豆を入れて8〜24時間浸す。暑い時期は冷蔵庫に入れる。
水を替えて煮立てる
豆をざるにあけ、浸した水は捨てて、豆を水で洗う。鍋に豆、煮る水2L、玉ねぎ、にんにく、エパソーテを入れて強火にかける。沸騰したらアクを取り、10分ほどしっかり煮立てる。
弱火で煮る
ふたを少しずらしてのせ、表面がふつふつと静かに揺れるくらいの弱火で1〜2時間煮る。豆が水から出そうになったら、湯を足す。豆を指でつまむと簡単につぶれ、中までクリームのようになっていれば煮上がり。
塩を加える
仕上げ用の塩を加えて、さらに10分煮る。玉ねぎとにんにくを取り出す。豆は煮汁に浸したまま置いておく。
玉ねぎを炒める
スキレットにラード60gを入れて中火で溶かす。みじん切りの玉ねぎと、好みでチレ・デ・アルボルを入れ、ときどき混ぜながら、玉ねぎが濃いきつね色になるまで8〜10分炒める。アルボルは色が濃くなったら取り出す。
にんにくを加える
にんにくを加えて、香りが立つまで1分ほど炒める。
豆を少しずつつぶす
穴あきお玉で、煮た豆の1/4ほどをすくってスキレットに入れる。煮汁はなるべく鍋に残す。マッシャーで粗くつぶす。残りの豆も3回に分けて加え、そのつどつぶす。なめらかな中に、少し粒が残るくらいが目安。
煮汁でのばしながら炒める
豆の煮汁250mlを加え、中火で木べらで底からこそげるように混ぜながら10〜15分炒める。重くなってきたら、煮汁を少しずつ足す。食べるときより少しゆるい、やわらかいマッシュポテトくらいで火を止める。塩で味をととのえる。
盛りつける
スキレットのまま、または温めた器に盛る。白いチーズを崩して散らし、トルティーヤチップスを添える。
黒いんげん豆で作るときも、手順は同じです。ユカタンのフリホル・コラードのようにしたいときは、手順7で豆を煮汁ごとブレンダーでピューレにし、ざるでこしながらスキレットのラードに加えます。ハバネロは丸ごと入れて一緒に炒め、辛みと香りが移ったら取り出します。
料理科学:なめらかなフリホーレスを作る理屈
塩水に浸すと、皮がやわらかくなる
乾燥した豆は、浸さずに煮ることもできます。でも、ひと晩浸しておくと、煮る時間が短くなり、豆が均一にやわらかく煮えます。
「豆を煮るときに塩を入れると硬くなる」とよく言われますが、これは誤りです。むしろ塩水に浸した豆は、皮がやわらかくなります。豆の皮のペクチン(細胞どうしをつなぐ炭水化物)は、カルシウムやマグネシウムで固く結びついています。塩水に浸すと、塩のナトリウムがカルシウムやマグネシウムと一部入れかわり、ペクチンの結びつきがゆるんで、水が皮を通りやすくなります。アメリカの料理研究機関、アメリカズ・テスト・キッチンは、塩水に浸した豆は早く煮え、水を均一に吸い、皮が割れて中身が飛び出すことも減ると報告しています。硬くなった豆を使った研究でも、塩を加えた液に浸すと、水だけに浸すより煮る時間が短くなりました。手順1で塩水に浸すのは、このためです。
浸した水は捨て、新しい水で煮ます。いんげん豆は、生や加熱が足りないと、レクチンという有害なたんぱく質が残ります。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、豆を水に浸してその水を捨て、しっかり沸騰させて煮ることを勧めています。80℃くらいのスロークッカーでは温度が足りず、食中毒が起きた例があります。手順2で強火でしっかり煮立てるのは、このためです。
豆を硬くするのは、酸と硬水のカルシウム
ペクチンは、植物の細胞と細胞をつなぐ「のり」のような物質です。カルシウムがあると、ペクチンどうしの間に橋がかかって、結びつきが強くなります。そのため、カルシウムやマグネシウムの多い硬水で煮ると、豆はやわらかくなりにくくなります。硬度の高いミネラルウォーターで煮るのは避けます。
酸も豆を硬くします。アメリカズ・テスト・キッチンの実験では、酸性の糖蜜を早く入れた豆は、やわらかくなるまでに2倍ほど時間がかかりました。トマトやライムなど酸っぱいものは、豆がやわらかく煮えてから加えます。このレシピでは、豆を煮るときは玉ねぎ、にんにく、香草だけを入れます。

煮汁ごとつぶすと、なめらかになる
豆の中身には、でんぷんがたくさん詰まっています。でんぷんの粒は、水と一緒に加熱すると、水を吸ってふくらみ、やがて崩れて、でんぷんの分子が周りの水に溶け出します。これを「糊化(こか)」と呼びます。でんぷんの種類によって、55℃くらいから85℃くらいで始まります。よく煮た豆が、指でつまむとクリームのようにつぶれるのは、細胞をつなぐペクチンがゆるみ、中のでんぷんが糊化しているからです。
手順7と8で、つぶした豆に煮汁を加えて炒めるのは、このでんぷんを生かすためです。豆をつぶすと、糊化したでんぷんが外に出て、煮汁と混ざってとろみになります。煮汁にもでんぷんが溶け出しているので、水ではなく煮汁でのばすと、なめらかでクリーミーに仕上がります。手順4で煮汁に塩を入れておくのは、のばしても味が薄くならないようにするためです。
糊化したでんぷんは、冷めると分子が並び直して、硬く固まっていきます。これを「老化」と呼びます。ベイレスが「食べるときより少しゆるく仕上げる」と書いているのはこのためで、フリホーレスは置いておくと、どんどん固くなります。
ラードの風味
メキシコのフリホーレス・レフリトスには、ラードが欠かせません。ラードは、豚の脂を加熱して溶かし出したものです。よく精製したラードは、においも味もほとんどありませんが、水を使わずに高温で溶かし出したラードは、茶色く、香ばしい風味が付きます。豚の脂の香りが、豆の素朴な味にこくを加えます。
ラードは、油の中では比較的煙の出にくい脂で、煙が出始める温度は190℃くらいです。手順5で、玉ねぎを濃いきつね色になるまでじっくり炒められます。ラードがなければサラダ油でも作れますが、ベイレスは、ベーコンやチョリソを焼いたときに出る脂も、こくのある脂として勧めています。
本場との違い
- 豆:ピントビーンズは日本のスーパーでは手に入りにくいので、通販の輸入品を使います。見つからなければ、模様の似たうずら豆で代用できます。黒いんげん豆も同じ作り方です。
- ラード:よく精製したラードは、においがほとんどありません。豚の香りを強くしたいときは、ベーコンを焼いて出た脂や、カルニタスを煮たあとのラードを混ぜると、本場に近いこくが出ます。
- エパソーテ:メキシコでは、豆を煮るときに香草のエパソーテをよく入れます。独特の香りがあり、豆によるおなかのガスを減らすとも言われます。日本では生の葉はまず手に入らないので、乾燥品を使うか、入れずに作ります。
- チーズ:本場では、ケソ・フレスコやケソ・アニェホなど、メキシコの白いチーズを散らします。日本では手に入りにくいので、塩けがあって崩れやすいフェタチーズで代用します。
- 缶詰で作る:時間がないときは、ピントビーンズや黒いんげん豆の水煮缶で作れます(Amazon|楽天)。缶の汁を煮汁の代わりにして、手順5から始めます。でき上がったリフライドビーンズの缶詰もあり、小鍋で温めて水でのばせばそのまま使えます(Amazon|楽天)。
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食べ方
テキサスのテックスメックス店のように、エンチラーダやブリトー、タコスの皿に、メキシカンライスと一緒に添えるのが定番です。温かいうちにトルティーヤチップスですくえば、そのままディップになります。トスターダ(揚げた平たいトルティーヤ)に塗って、具をのせる土台にもなります。
- ブリトーに:小麦粉のトルティーヤに、リフライドビーンズとご飯、煮込んだ肉を巻きます。
- ナチョスに:チップスの上に、温めたリフライドビーンズを少しずつ落としてから、チーズをのせて焼きます。
- パンに塗って:メキシコには、パンにレフリトスを塗る食べ方もあります。
ソースとチーズをかけて焼くテキサスのブリトーと、テックスメックスのナチョスにもどうぞ。
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保存
- 冷蔵:保存容器に入れて3〜4日程度。冷めると固くなるので、温め直すときは水か煮汁を大さじ1〜2加えて、混ぜながら温めます
- 冷凍:小分けにして保存袋に入れ、1か月程度。冷蔵庫で解凍してから温め直します
- 煮た豆:炒める前の煮豆は、煮汁に浸したまま冷蔵で3〜4日程度。煮汁ごと冷凍もできます
もっと知りたい人へ
豆やでんぷんが加熱で変わる仕組みを詳しく知りたい人には、料理科学の定番の本があります。
マギー キッチンサイエンス(ハロルド・マギー『On Food and Cooking』の日本語版)(Amazon|楽天)
メキシコの家庭の豆料理やサルサを、リック・ベイレスの本で学ぶこともできます。
Rick Bayless's Mexican Kitchen(Amazon)
出典
- Wikipedia「Refried beans」
- Wikipedia(スペイン語)「Frijoles refritos」
- Real Academia Española「Diccionario de la lengua española(2001年版)re-」
- Snopes「What Are 'Refried Beans'?」
- Barry Popik「Frijoles Refritos (refried beans)」
- America's Test Kitchen「Frijoles Negros Refritos」
- Rick Bayless「Classic Mexican Fried Beans」
- Restaurante Mexicano(Karen Hursh Graber)「Mexican Beans」
- Naatik「Recipe of the Month: Maestro Pedro's Frijol Colado」
- Wikipedia「Pinto bean」
- Wikipedia「Phaseolus vulgaris」
- America's Test Kitchen「How to Brine Beans」
- America's Test Kitchen「Brining Beans in Half the Water」
- America's Test Kitchen「New England Baked Beans」
- Palma-Tirado ほか「Fenómeno de endurecimiento y ablandamiento del frijol: alternativas tecnológicas」Archivos Latinoamericanos de Nutrición
- Home-Ec 101「Why Won't My Dried Beans Soften?」
- Wikipedia「Pectin」
- Wikipedia「Starch gelatinization」
- Jessica Gavin「How to Make Refried Beans」
- Wikipedia「Lard」
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。