
家庭のオーブンで作るエローテ
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エローテは、メキシコの街角の屋台で売られている、とうもろこしのおやつです。熱々のとうもろこしにマヨネーズを塗り、白いチーズをたっぷりまぶして、唐辛子の粉とライムで仕上げます。甘さ、塩けとコク、辛さ、酸味が一度に来る、メキシコの屋台を代表する味です。
本場の屋台では大鍋でゆでたり、炭火で焼いたりしますが、家庭ではオーブンのグリル機能や魚焼きグリルで焦げ目をつければ、香ばしい焼きとうもろこし版のエローテが作れます。おいしさの決め手は、とうもろこしの「鮮度」と「焦げ目」です。
本場のエローテとは
エローテ(elote)は、メキシコと中米の多くの地域で「とうもろこしの穂(実のついた芯)」を指す言葉です。語源はアステカの人々が話していたナワトル語で、「やわらかい穂」という意味の言葉から来ています。料理の名前であると同時に、まだ若くやわらかいとうもろこしそのものの呼び名でもあります。
屋台のエローテ
メキシコでは、エローテを売る人を「エロテロ」と呼びます。いちばん一般的なのはゆでたエローテです。皮付きのまま、エパソテというハーブや塩を入れたお湯でゆで、ゆでた鍋や火鉢で温かいまま保って売ります。注文すると、木の串に刺したエローテに、マヨネーズ、すりおろしたチーズ、唐辛子の粉、ライムを好みでのせてくれます。屋台の人に「コン・トド?(全部のせる?)」と聞かれるのが定番のやりとりです。
炭火で焼いたものは「エローテ・アサード(焼きエローテ)」と呼ばれます。皮付きのまま、皮が焦げ始めて実が香ばしくなるまで焼きます。この記事で作るのは、こちらの焼いたエローテです。
カップで食べる「エスキテス」
エローテの実を芯から外し、カップに入れて食べるのが「エスキテス」です。語源はナワトル語で「炒ったとうもろこし」を意味する言葉です。実をエパソテ入りの塩水でやわらかくゆでたり、バターやラードで玉ねぎや青唐辛子と炒めてからスープで煮たりして、カップに盛ります。トッピングはエローテと同じで、ライム、唐辛子の粉、塩、チーズ、マヨネーズです。
地域によって呼び名が違い、メキシコ北東部では「トロレス」、ミチョアカン州では「バソローテ(カップのエローテ)」などと呼ばれます。芯を持たずに食べられるので、歩きながら食べるのにも向いています。
欠かせないチーズ「コティハ」
エローテにまぶす白いチーズの定番が、コティハ(queso Cotija)です。ミチョアカン州の町コティハの名前がついた、牛乳から作る白くかたいチーズで、100日から1年ほど熟成させます。塩けが強く、ミルクのコクがあります。若いものはフェタチーズに、熟成したものはパルメザンチーズに近い味です。温めてもやわらかくなるだけで溶けず、ぽろぽろと崩れるので、とうもろこしの表面にまぶしやすいのが特徴です。
エローテのレシピ:材料(4本分)
とうもろこし
- とうもろこし皮付きで1本350〜450g4本
- サラダ油小さじ2(8g)
- 塩少々
とうもろこしは、皮付きで、できれば収穫した日か翌日のものを選びます。ひげが茶色く湿っていて、皮が緑色でみずみずしいものが新鮮です(理由は後で説明します)。
トッピング
コティハは日本では手に入りにくいチーズです。代わりに、フェタチーズ(Amazon|楽天)を細かく崩すか、粉チーズ(パルメザン)を使います。フェタは若いコティハに、粉チーズは熟成したコティハに近い味です。粉チーズは塩けとうまみが強いので、量を2/3ほどに減らしてください。
タヒンは、唐辛子、塩、乾燥させたライム果汁を混ぜたメキシコの調味料です。手に入らないときは、カイエンペッパー小さじ1/4〜1/2(0.5〜1g)(Amazon|楽天)と塩ひとつまみで代用できます。
エスキテス(カップ版)にする場合(4人分)
エパソテは、メキシコでとうもろこしや豆を煮るときに使う、独特の強い香りのハーブです。なくても作れます。
道具
- オーブン(グリル機能付き)、または魚焼きグリル
- 天板とアルミホイル
- 刷毛(はけ)またはスプーン(マヨネーズを塗る用)
- バット(チーズを広げる用)
- 鋳鉄のスキレット(エスキテスを作る場合)(Amazon|楽天)
作り方
焼き方A:皮をむいて焼く(焦げ目がしっかりつく)
皮をむく
とうもろこしの皮とひげをすべて取り除く。根元の軸が長ければ、持ち手として3〜4cm残して切る。
予熱する
オーブンのグリル機能(上火)を強にして5〜10分予熱する。グリル機能がない場合は、オーブンを250℃(最高温度)に予熱する。魚焼きグリルの場合は3〜5分空焼きする。
油を塗る
とうもろこしの表面にサラダ油を薄く塗り、塩を軽くふる。
焼く
アルミホイルを敷いた天板にのせ、熱源に近い上段に入れる。4〜5分ごとに4分の1回転させながら、全体に濃い焦げ目がところどころつくまで焼く。グリル機能で15〜20分、250℃のオーブンで20〜30分、両面焼きの魚焼きグリルで10〜15分が目安。
焼き方B:皮付きで焼いてから焦がす(実がみずみずしい)
ひげを取る
外側のかたい皮を2〜3枚むき、内側の薄い皮を残す。皮の先を少しめくってひげを取り、皮を戻す。
蒸し焼きにする
オーブンを220℃に予熱し、天板にのせて30〜40分焼く。途中で一度裏返す。
皮をむいて焦がす
やけどに気をつけて皮をむき(根元に残して持ち手にしてもよい)、油を薄く塗る。グリル機能(または魚焼きグリル)で5〜8分、回しながら焦げ目をつける。
仕上げ(共通)
チーズを準備する
コティハ(またはフェタ)を細かく崩してバットに広げる。
マヨネーズを塗る
焼きたての熱いうちに、マヨネーズを全体に薄く塗る。
チーズをまぶす
チーズのバットの上でとうもろこしを転がし、まんべんなくまぶす。
唐辛子をふる
タヒンを全体にふり、好みでシラントロを散らす。ライムを添え、食べる直前にしぼる。
エスキテス(カップ版)
実を外す
焼いたとうもろこしを立て、包丁で芯にそって実をそぎ落とす。
炒める
スキレットにバターを中火で溶かし、玉ねぎとハラペーニョを2〜3分炒める。
煮る
とうもろこしの実、エパソテ、水、塩を加え、ふたをせずに3〜5分、水分が少し残るくらいまで煮る。
盛りつける
カップに盛り、マヨネーズ、チーズ、タヒンをのせ、ライムをしぼる。
料理科学:甘さと焦げ目の正体
とれたてのとうもろこしが甘い理由
とうもろこしは、とれたてがいちばん甘い野菜です。収穫した瞬間から、実の中の糖がでんぷんに変わり始めるからです。
とうもろこしの実は、本来は次の世代の芽を育てるための栄養の貯蔵庫です。実が熟すにつれて、葉から送られてきた糖をでんぷんに作り変えてためこみます。私たちが食べるとうもろこしは、この途中の、まだ若い「乳熟期」に収穫したものです。爪で実を押すと、白い乳のような汁が出る時期です。収穫したあとも実の中ではこの変化が進むので、時間がたつほど甘さが減り、でんぷんっぽくなっていきます。
この変化は、温度が高いほど速く進みます。米国ユタ州立大学の資料によれば、昔ながらの品種では、30℃を超える温度で置くと24時間以内に糖の半分を失います。0℃近くまで冷やしても、1日あたり8%ほど減っていきます。日本の産地で、気温の低い夜明け前に収穫して、すぐに冷やして出荷するのはこのためです。
家庭では、買った日のうちに焼くのがいちばんです。すぐに使わないときは、皮付きのままラップで包み、冷蔵庫に入れて2〜3日以内に使います。
焦げ目の香り:メイラード反応とカラメル化
焼きとうもろこしの香ばしさは、2つの「焦げ」の反応から生まれます。

1つは「メイラード反応」です。糖と、たんぱく質のもとになるアミノ酸が熱で反応して、茶色の色と香ばしい香りを作ります。この反応は140〜165℃あたりから盛んに進みます。もう1つは「カラメル化」です。こちらはアミノ酸がなくても、糖だけが熱で分解して茶色くなり、甘く苦い香りが出る反応です。糖の種類によって始まる温度が違い、果糖は100℃を少し超えたあたりから、ぶどう糖は150℃前後、砂糖(ショ糖)は170℃前後から進みます。
とうもろこしの実には、ショ糖やぶどう糖などの糖が含まれています。そのため、強い熱に当てると表面でこの2つの反応が起き、ところどころが濃い茶色から黒っぽく焦げて、屋台の焼きとうもろこしの香りになります。手順でオーブンの最高温度やグリル機能を使い、熱源の近くで焼くのは、表面の温度をこの温度帯まで一気に上げるためです。
ただし、実の表面が水分で濡れているあいだは、熱は水を蒸発させるのに使われ、表面の温度は100℃ほどで止まってしまいます。焦げ目がつき始めるのは、表面の水分が飛んでからです。油を薄く塗るのは、乾いた熱を実の表面に伝えやすくして、焼きむらを減らすためです。
日本のスイートコーンは糖が多いので、焼き色がつき始めると一気に焦げが進みます。4〜5分ごとに回して、焦げすぎないように様子を見てください。
メイラード反応とカラメル化の違いは、こちらの記事で詳しく解説しています。
メイラード反応とカラメル化:焼き色と香りの正体焼いた肉や玉ねぎが茶色く香ばしくなる理由を、メイラード反応とカラメル化の違いから解説します。焼き色は表面が乾いてからつく仕組み、焦げとの境目、焼き付けで肉汁は閉じ込められない理由、BBQのバークの正体が分かります。
皮付きで焼くか、皮をむいて焼くか
焼き方Aと焼き方Bの違いは、実が直接熱に当たるかどうかです。
皮をむいて焼くと(焼き方A)、実の表面が直接高温にさらされるので、すぐに水分が飛んで焦げ目がつきます。香ばしさは強くなりますが、長く焼くと実の水分が抜けて、かたく乾いた食感になりやすくなります。
皮付きで焼くと(焼き方B)、皮の中に実の水分が閉じこめられ、実は蒸気で蒸されるように火が通ります。皮の中は100℃前後に保たれるので、実はみずみずしくやわらかく仕上がりますが、実そのものにはほとんど焦げ目がつきません。米国の料理研究機関アメリカズ・テスト・キッチンの比較でも、皮付きで焼くと蒸気で実がやわらかくなり、皮をむいて直接焼くと実がかたく乾きやすいという結果でした。
焼き方Bでは、皮付きで蒸し焼きにして実をやわらかくしてから、最後に皮をむいて短時間だけ強い熱に当てて焦げ目をつけます。みずみずしさと香ばしさの両方を取る方法です。
本場との違い
- とうもろこしの品種:これがいちばん大きな違いです。メキシコには60を超えるとうもろこしの在来の系統があり、エローテには中央部の粒が大きく粉っぽい白いとうもろこし(コニコ・ブランコ、カカワシントレなど)がよく使われます。白いとうもろこしは甘さがひかえめで、しっかりした歯ごたえがあり、塩やライム、唐辛子と合わせて食べるものです。一方、日本で売られているとうもろこしは「味来」や「ゴールドラッシュ」など甘みを強く改良したスイートコーンです。米国でスーパースイートと呼ばれるタイプの品種は、昔ながらのスイートコーンの4〜10倍の糖を含みます。日本で作るエローテは、本場よりずっと甘く、果物のような味になります。そのぶん、チーズの塩けとタヒンの辛さ、ライムの酸味をしっかり効かせるとバランスがとれます。
- チーズ:本場はコティハです。日本では手に入りにくいので、フェタチーズか粉チーズで代用しています。
- 唐辛子:屋台では唐辛子の粉をふります。家庭版では、日本の通販でも手に入りやすく、ライムと塩も一緒に入ったタヒンを使っています。
- 加熱の方法:本場の屋台はゆでるか炭火焼きです。家庭版はオーブンのグリル機能や魚焼きグリルで焦げ目をつけています。炭火の香りはつきませんが、表面の焦げ目でメイラード反応とカラメル化の香ばしさは出せます。
エローテのとうもろこしと、トルティーヤにするとうもろこしの違いは、ニシュタマルの記事で詳しく解説しています。
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食べ方
- そのまま:芯を持ってかぶりつくのが屋台の食べ方です。ライムは食べる直前にしぼります。
- エスキテス:カップに入れて、スプーンで食べます。冷めてもおいしく、持ち寄りのパーティーにも向いています。
- タコスの付け合わせ:焼いた肉のタコスと一緒に出すと、メキシコの屋台の食卓になります。
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保存
- 焼いたとうもろこし(トッピング前):ラップで包んで冷蔵で1〜2日程度。食べる前にグリルで軽く温め直してから、マヨネーズとチーズをまぶします。
- 冷凍:実を外して保存袋に入れ、冷凍で1か月程度。凍ったままスキレットで炒めて、エスキテスにできます。
- トッピングをまぶしたエローテは、マヨネーズが分離しやすいので、作りたてを食べきってください。
もっと知りたい人へ
メイラード反応やカラメル化をはじめ、野菜や食材の科学を詳しく知りたい人には、料理科学の定番の本があります。
マギー キッチンサイエンス(ハロルド・マギー『On Food and Cooking』の日本語版)(Amazon|楽天)
メキシコの屋台料理や地方料理を、本場の材料と作り方で知りたい人には、こちらの本もおすすめです。
Rick Bayless's Mexican Kitchen(Amazon)
出典
- Wikipedia「Elote」
- Wikipedia「Esquites」
- Wikipedia「Cotija cheese」
- Wikipedia「Tajín (seasoning)」
- Excélsior「Tipos de elotes en México: guía gastronómica y cómo disfrutarlos」
- Mexico News Daily「Taste of Mexico: Elote」
- Hola America News「Sweet corn meet White corn, the star of Mexican cuisine」
- Wikipedia「Sweet corn」
- Utah State University Extension「Sweet Corn: Harvest and Handling」
- The Ohio State University CFAES「Chow Line: Summertime corn — how sweet it is」
- 農畜産業振興機構「スイートコーンの需給動向」
- 鹿児島市「スイートコーン」
- Wikipedia「Maillard reaction」
- Wikipedia「Caramelization」
- America's Test Kitchen「To Husk or Not to Husk Grilled Corn」
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。