木のまな板にのせた、表面が濃い赤茶色に焼き固まったスペアリブ。右側は1本ずつ切り分けられ、手前の1本は断面のピンク色の肉と骨が見える
テックスメックスとBBQ

家庭のオーブンで作るBBQスペアリブ

地域
アメリカ(テネシー州メンフィス・ミズーリ州カンザスシティ)
分量
4人分
公開

この記事はAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンクを含みます。

アメリカのBBQで、プルドポーク、ブリスケットと並ぶ定番が、豚のスペアリブです。甘辛いスパイスをすり込んで何時間もかけて焼き上げると、表面は濃い飴色に焼き固まり、骨からすっと肉が外れるほど柔らかくなります。

日本のスペアリブは、短く切ってタレに漬けて焼くことが多いですが、本場では骨が並んだ大きな塊のまま焼きます。低温のオーブンで時間をかければ、家庭でも本場のBBQの柔らかさになります。

本場のスペアリブとは

スペアリブとベビーバックリブ

アメリカのBBQで焼く豚のあばら肉(リブ)には、大きく分けて2種類あります。

  • スペアリブ:あばら骨のおなか側の部分です。平たく、骨が多めで脂ものっていて、長く焼くと柔らかく、味が濃くなります
  • ベビーバックリブ:あばら骨の背中側、ロースに近い部分です。骨が短く曲がっていて、赤身が多く、早く火が通ります

スペアリブの塊には、胸骨と軟骨のついた硬い部分がついています。これを切り落として、きれいな長方形に整えたものを「セントルイス・カット」と呼びます。切り落とした部分は「リブチップ」と呼ばれ、別に焼いて食べます。

メンフィスの「ドライ」とカンザスシティの「ウェット」

スペアリブの焼き方は、地域によって違います。

  • メンフィス(テネシー州):スパイスをすり込む「ドライラブ」だけで焼き、ソースは塗らずに出すのが定番です。店では、ソースを塗らない「ドライ」か、仕上げにソースを塗る「ウェット」かを選べることもあります
  • カンザスシティ(ミズーリ州):仕上げに、トマトと糖蜜の入った甘く濃厚なBBQソースを塗って焼くのが定番です。日本でよく知られている「BBQソース」の味は、このカンザスシティ式に近いものです

今回は、ドライラブで焼き上げ、好みでカンザスシティ式のソースを塗って仕上げる作り方を紹介します。

スペアリブのレシピ:材料(4人分)

豚肉と下味

  • 豚スペアリブ(骨つきの塊、1枚)(Amazon|楽天)1.2〜1.5kg
  • 塩肉の重さの約1%小さじ2と1/2(13g)
  • イエローマスタード(辛くないアメリカ式のマスタード)(Amazon|楽天)大さじ1(15g)

骨のついた大きな塊のスペアリブは、スーパーではあまり見かけませんが、通販で手に入ります。短く切ったスペアリブでも同じ手順で作れます。その場合は、焼き時間を短めにして温度と柔らかさで判断してください。

ドライラブ

  • パプリカパウダー(Amazon|楽天)大さじ1(7g)
  • スモークパプリカ(Amazon|楽天)小さじ2(4g)
  • ブラウンシュガー(またはきび砂糖)(Amazon|楽天)大さじ2(18g)
  • 粗挽き黒こしょう(Amazon|楽天)小さじ2(4g)
  • ガーリックパウダー(Amazon|楽天)小さじ1(3g)
  • オニオンパウダー(Amazon|楽天)小さじ1(2.5g)
  • チリパウダー(Amazon|楽天)小さじ1(2g)
  • カイエンペッパー(Amazon|楽天)小さじ1/4(0.5g)

焼く途中で使うもの

  • りんごジュース(果汁100%)大さじ3(45ml)

カンザスシティ式BBQソース(好みで)

  • ケチャップ150g
  • ブラウンシュガー(Amazon|楽天)大さじ3(27g)
  • アップルサイダービネガー(またはりんご酢)(Amazon|楽天)大さじ2(30ml)
  • ウスターソース大さじ1(15ml)
  • イエローマスタード(Amazon|楽天)小さじ1(5g)
  • スモークパプリカ(Amazon|楽天)小さじ1/2(1g)
  • ガーリックパウダー(Amazon|楽天)小さじ1/4(0.8g)
  • 粗挽き黒こしょう(Amazon|楽天)小さじ1/4(0.5g)
  • 水大さじ2(30ml)

道具

  • 料理用温度計(肉に刺してすぐ測れるタイプ)(Amazon|楽天)
  • 天板と焼き網(Amazon|楽天)
  • アルミホイル(幅広のもの)
  • キッチンペーパー(膜をはがす用)

作り方

  1. 前日:膜をはがす

    スペアリブを骨の側を上にして置く。骨の上を覆っている薄く白い膜の端に、テーブルナイフの先を差し込んで少し浮かせる。浮いた部分をキッチンペーパーでつかみ、端から一気にはがす。

  2. 前日:塩をする

    スペアリブの両面に塩をまんべんなくすり込む。ラップをせずに網をのせたバットに置き、冷蔵庫で12〜24時間おく。

  3. ラブをまぶす

    オーブンを140℃に予熱する。スペアリブの両面にイエローマスタードを薄く塗り、ドライラブの材料を混ぜて全体にまぶして手で押さえる。20〜30分おいてなじませる。

  4. 焼く(前半)

    天板に焼き網をのせ、肉の側を上にしてスペアリブを置く。140℃で2時間、表面が濃い赤茶色に焼き固まるまで焼く。

  5. 包んで焼く(中盤)

    アルミホイルを2枚重ねて広げ、スペアリブを肉の側を下にしてのせる。りんごジュースをかけて、ぴったりと包む。140℃で1時間〜1時間半焼く。

  6. 焼き上がりを確かめる

    ホイルを開き、骨と骨の間の肉に温度計を刺す。93〜96℃になり、竹串がすっと入れば焼き上がり。

  7. 仕上げる(後半)

    ホイルを外して、肉の側を上にして網に戻す。オーブンを200℃に上げて10〜15分焼き、表面を乾かして焼き固める。ソースを塗る場合は、ここでソースを塗ってから焼き、5分ごとに様子を見て、焦げる前に取り出す。

  8. 切る

    10分休ませてから、骨と骨の間に包丁を入れて1本ずつ切り分ける。

カンザスシティ式BBQソースを作る

ソースの材料をすべて小鍋に入れて混ぜ、弱火で10分、ときどき混ぜながら軽く煮詰めます。冷蔵庫で1週間ほど保存できます。

料理科学:甘い皮と、骨から外れる柔らかさ

骨の側の膜をはがす理由

スペアリブの骨の側には、薄く白い膜がついています。これは、あばら骨の内側を覆っていた膜で、加熱するとゴムのように硬く縮み、かみ切れなくなります。また、この膜があると、塩やスパイスが肉に届きません。手順1でこの膜をはがすのは、食感をよくし、骨の側にも味をしみ込ませるためです。

砂糖のカラメル化と焦げの境目

ドライラブのブラウンシュガーは、焼くうちに溶けて、表面に甘く香ばしい飴色の皮を作ります。砂糖が熱で分解して、褐色の色と香りを作る反応を「カラメル化」と呼びます。

オーブンシートを敷いた天板にのせた、焼く前のスペアリブの塊。赤いドライラブが全体にまぶしてある

カラメル化が始まる温度は、糖の種類によって違います。果物に多い果糖は105℃前後から、ブドウ糖は150℃前後から、砂糖(ショ糖)は170℃前後からカラメル化が始まるとされています。温度が高すぎると、カラメル化を通り越して黒く焦げ、苦くなります。

手順4〜6を140℃の低温で焼いているのは、肉を柔らかくするためと同時に、ラブの砂糖を焦がさずに、ゆっくり香ばしい皮に変えるためです。BBQソースにはケチャップと砂糖がたっぷり入っていて、さらに焦げやすいので、手順7の最後に塗って短時間だけ焼きます。

砂糖のカラメル化とメイラード反応の違いは、こちらの記事で詳しく解説しています。

メイラード反応とカラメル化:焼き色と香りの正体焼いた肉や玉ねぎが茶色く香ばしくなる理由を、メイラード反応とカラメル化の違いから解説します。焼き色は表面が乾いてからつく仕組み、焦げとの境目、焼き付けで肉汁は閉じ込められない理由、BBQのバークの正体が分かります。

骨のまわりの筋が柔らかくなる

スペアリブは、骨と骨の間に、筋肉と結合組織が層になって重なっている部位です。結合組織の主成分のコラーゲンは、70〜80℃あたりから、何時間もかけてゆっくりゼラチンに変わっていきます。骨の間の温度を90℃台まで上げて保つことで、肉が骨から外れるほど柔らかくなります。

焼き上がりの目安としてよく使われるのが、「ベンドテスト(曲げテスト)」です。トングでスペアリブの塊の端から3分の1くらいの所を持ち上げると、焼き上がったリブは自分の重さで大きくしなり、表面の皮に細かいひびが入ります。温度計とあわせて確かめてください。

コラーゲンがゼラチンに変わる温度と時間は、こちらの記事で詳しく解説しています。

コラーゲンとゼラチン:かたい肉がほろほろになるまでかたい牛すねやブリスケット、豚の肩肉が、長く加熱するとほろほろになるのはなぜか。コラーゲンが縮む温度とゼラチンに変わる温度と時間、しっとり感の正体、湿熱と乾熱、ストール、圧力鍋との違いが分かります。

ホイルで包む「テキサス・クラッチ」

手順5でアルミホイルに包むのは、BBQで「テキサス・クラッチ」と呼ばれる方法です。肉の表面から水分が蒸発し続けると、その気化熱で肉が冷やされ、温度がなかなか上がらなくなります。ホイルで包むと蒸発が止まって温度が上がり、少量のりんごジュースの蒸気で蒸し焼きのようになって、柔らかくなるまでの時間が短くなります。

アメリカのBBQでは、燻製器で3時間焼き、ホイルで包んで2時間、ホイルを外してソースを塗って1時間焼く「3-2-1法」がよく知られています。今回の作り方は、これを家庭のオーブン向けに短くしたものです。

本場との違い

  • 煙の香り:本場はヒッコリーなどの薪で燻します。オーブンでは燻製の香りがつかないので、ラブにスモークパプリカを入れて補っています。
  • 焼き時間:本場の燻製器は110℃前後の低温で、5〜6時間かけることもあります。家庭版は140℃にして、3時間半ほどに縮めています。

食べ方

骨を持ってかぶりつくのが本場の食べ方です。付け合わせには、コールスローやピクルス、ベイクドビーンズ、コーンブレッドがよく合います。

BBQの付け合わせの定番、マカロニ&チーズの作り方も紹介しています。

家庭のオーブンで作るマカロニ&チーズ(マッケンチーズ)アメリカ南部の焼くマカロニ&チーズを家庭のオーブンで。ベシャメルにチェダーを溶かしたソースで硬めにゆでたマカロニを和え、焼き色をつけます。ソースが分離しない理由、マカロニを硬めにゆでる理由、焼き色のメイラード反応を料理科学で解説します。

同じアメリカのBBQの定番、プルドポークとブリスケットの作り方も紹介しています。

家庭のオーブンで作るプルドポークノースカロライナ東部の本場のプルドポークを、燻製器ではなく家庭のオーブンで。豚肩ロースを140℃で焼き、中心温度91〜96℃でほろほろに。ドライ・ブライン、コラーゲンのゼラチン化、ストールの理由を料理科学で解説します。 家庭のオーブンで作るブリスケットテキサス中部のBBQの名物ブリスケットを、燻製器ではなく家庭のオーブンで。塩と黒こしょうだけで140℃で焼き、ブッチャーペーパーで包んで中心温度93〜96℃に仕上げます。ストール、休ませる理由、繊維を断つ切り方を料理科学で解説します。

保存

  • 冷蔵:切り分けずに塊のまま、アルミホイルで包んで3日程度
  • 冷凍:塊のまま保存袋に入れて1か月程度
  • 温め直し:ホイルに包んで150℃のオーブンで20〜30分温め、最後にホイルを開いて表面を焼くと、焼きたてに近くなります

もっと知りたい人へ

BBQの科学をもっと詳しく知りたい人には、BBQの科学を実験で検証した「Amazing Ribs」の主宰者による本があります(英語)。

Meathead: The Science of Great Barbecue and Grilling(Amazon|楽天)

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。