こんがり焼けたローストチキンを切り分けて木の板に盛り、右にフライドポテト、左にレタスとトマトのサラダ。奥に緑色のソースの器
中南米・カリブ

家庭のオーブンで作るポジョ・ア・ラ・ブラサ

地域
ペルー
分量
4人分
公開

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ポジョ・ア・ラ・ブラサは、ペルーで国民食と呼ばれるほど愛されているローストチキンです。醤油やにんにく、クミン、唐辛子をすり込んだ鶏を丸ごと回転させながら焼き上げ、フライドポテトと緑の唐辛子ソースを添えて食べます。

本場では専用の回転式の窯で焼きますが、鶏を背中から開けば、家庭のオーブンでも皮はパリッと、中はしっとりと焼き上がります。

本場のポジョ・ア・ラ・ブラサとは

ポジョ・ア・ラ・ブラサ(pollo a la brasa)は、スペイン語で「炭火焼きの鶏」という意味です。

スイス人が始めたペルーの国民食

この料理は、1950年にペルーの首都リマの郊外で生まれました。考案したのは、リマ近郊に住んでいたスイス人のロジャー・シュラーです。彼が開いたレストラン「グランハ・アスール」で、鶏を炭火の上で回しながら焼いて出したのが始まりとされています。たくさんの鶏を一度に焼くための回転式の窯は、同じスイス出身の金属職人フランツ・ウルリッヒが作りました。

最初は塩だけで味つけしていましたが、やがてローズマリーや黒こしょう、醤油、クミン、アヒ・パンカという唐辛子などが加わり、今の味になりました。醤油が使われているのは、19世紀からペルーに移り住んだ中国系の人々の料理の影響が大きいと考えられています。

今ではペルー全土に「ポジェリア(鶏料理店)」があり、ペルーの人は平均で月に3回ほどこの料理を食べると言われます。国の文化遺産にも指定され、毎年7月の第3日曜日は「ポジョ・ア・ラ・ブラサの日」になっています。

付け合わせとソース

ポジョ・ア・ラ・ブラサには、フライドポテトとサラダが必ずついてきます。注文するときは、4分の1羽を「ウン・クアルト」、半羽を「メディオ・ポジョ」のように量で頼みます。

ソースは、マヨネーズやケチャップのほか、「アヒ・ベルデ」と呼ばれる緑のソースが定番です。青唐辛子とシラントロ(パクチー)、ワカタイというペルーのハーブをマヨネーズと混ぜた、さわやかで少し辛いソースです。

ポジョ・ア・ラ・ブラサのレシピ:材料(4人分)

鶏肉と下味

  • 丸鶏(中抜き)(Amazon|楽天)1羽(1.3〜1.5kg)
  • 塩14g(鶏の重さの1%)

マリネ液

  • アヒ・パンカのペースト(Amazon|楽天)大さじ2(30g)
  • 醤油大さじ2(36g)
  • ライム汁大さじ2(30ml)
  • にんにく(すりおろし)4片(20g)
  • クミンパウダー(Amazon|楽天)小さじ2(4g)
  • パプリカパウダー(Amazon|楽天)小さじ2(4g)
  • オレガノ(乾燥)(Amazon|楽天)小さじ1(1g)
  • 粗挽き黒こしょう(Amazon|楽天)小さじ1(2g)
  • サラダ油大さじ1(12g)

アヒ・パンカは、ペルーの赤い乾燥唐辛子です。辛さはおだやかで、ほんのりスモーキーな甘い香りがあります。ペースト状の瓶詰めが通販で手に入ります。手に入らないときは、パプリカパウダーを大さじ1に増やし、カイエンペッパー小さじ1/4を加えて代用できます。

アヒ・ベルデ(緑のソース)

  • マヨネーズ100g
  • ハラペーニョ(生、または酢漬け)(Amazon|楽天)1本(15g)
  • シラントロ(パクチー)1/2束(10g)
  • 粉チーズ大さじ2(10g)
  • ライム汁大さじ1(15ml)
  • にんにく1/2片(3g)
  • ワカタイのペースト(あれば)(Amazon|楽天)小さじ2

ワカタイは、ペルーで料理に使われるマリーゴールドの仲間のハーブで、ミントとバジルを合わせたような独特の香りがあります。なくてもおいしく作れます。本場ではケソ・フレスコという白いチーズを入れますが、粉チーズで代用しています。

付け合わせ

  • フライドポテト(冷凍でよい)、サラダ

道具

  • 料理用温度計(肉に刺してすぐ測れるタイプ):鶏肉は中まで火が通っているかを温度で確かめます(Amazon|楽天)
  • 天板と焼き網(Amazon|楽天)
  • キッチンばさみ(丸鶏を開く用)(Amazon|楽天)

作り方

  1. 前日:鶏を開く

    丸鶏を胸を下にして置き、背骨の両側にキッチンばさみを入れて背骨を切り取る。鶏を裏返して胸の中央を手のひらで強く押し、平らに開く(スパッチコック)。

  2. 前日:塩をする

    鶏の表面と内側の水けをふき、塩14gを全体にまんべんなくすり込む。ラップをせずに網をのせたバットに置き、冷蔵庫で12〜24時間おいて皮を乾かす(ドライ・ブライン)。

  3. マリネする

    マリネ液の材料を混ぜる。焼く2〜4時間前に、鶏の皮の下に指を入れて皮と肉の間にすき間を作り、マリネ液の半量を肉に直接すり込む。残りを皮の上と内側全体に塗り、冷蔵庫に戻す。

  4. オーブンを予熱する

    オーブンを220℃に予熱する。焼く30分前に鶏を冷蔵庫から出しておく。

  5. 焼く

    天板に焼き網をのせ、皮を上にして鶏を平らに置く。220℃で40〜50分焼く。途中で焼き色が濃くなりすぎたら、焦げそうな部分だけアルミホイルをかぶせる。

  6. 温度を確かめる

    もものいちばん厚い部分と、胸肉のいちばん厚い部分に温度計を刺し、どちらも中心温度が75℃以上になっていれば焼き上がり。足りなければ5分ずつ追加で焼く。

  7. 休ませる

    焼き上がったら網ごと取り出し、10分休ませる。

  8. アヒ・ベルデを作る

    鶏を焼いている間に、アヒ・ベルデの材料をすべてミキサーにかけてなめらかにする。

  9. 切り分ける

    鶏を4つに切り分け、フライドポテト、サラダ、アヒ・ベルデを添える。

料理科学:皮をパリッと焼き上げる

皮が濡れていると焼き色がつかない

鶏の皮をパリッと焼くために一番大事なのは、皮を乾かしておくことです。皮の表面に水分が残っていると、オーブンの熱はまず水を蒸発させるのに使われます。水が残っているあいだ、皮の温度は100℃ほどで止まってしまい、焼き色がつきません。

焼き色と香ばしさは、たんぱく質のもとになるアミノ酸と糖が反応する「メイラード反応」によるものです。この反応は表面の水分が飛んで温度が上がってから盛んに進みます。手順2で、塩をすり込んだ鶏をラップせずに一晩冷蔵庫に置くのは、冷蔵庫の乾いた空気で皮の水分を飛ばしておくためです。

焼き色と香りのもとになるメイラード反応は、こちらの記事で詳しく解説しています。

メイラード反応とカラメル化:焼き色と香りの正体焼いた肉や玉ねぎが茶色く香ばしくなる理由を、メイラード反応とカラメル化の違いから解説します。焼き色は表面が乾いてからつく仕組み、焦げとの境目、焼き付けで肉汁は閉じ込められない理由、BBQのバークの正体が分かります。

塩を前日にすり込む「ドライ・ブライン」

前日に塩をすり込むと、まず肉の水分が表面に引き出され、その水分に塩が溶けて、時間をかけて肉の中に戻っていきます。肉は自分の肉汁で塩漬けされる形になり、中まで均一に塩味が入ります。

塩はたんぱく質の性質も変え、水分を抱え込みやすくします。そのため焼いても肉汁が逃げにくく、特に乾きやすい胸肉がしっとり仕上がります。

マリネが効くのは表面だけ

本場のポジェリアでは、鶏を醤油やライム汁、スパイスの液に一晩漬け込みます。ただし、マリネ液の味や香りが染み込むのは、肉の表面から数ミリほどです。肉は水分の多い組織なので、油に溶ける香り成分や大きな分子は、中まではほとんど入っていきません。中まで味をつけてくれるのは、マリネ液ではなく、前日にすり込んだ塩です。

そこで家庭版では、塩は前日に、マリネ液は焼く数時間前に分けて使います。マリネ液を皮の下にもすり込むのは、皮にさえぎられずに肉の表面に直接香りをつけるためです。

醤油やライム汁を塗った皮は、水分が多くなるうえ、醤油の糖分で焦げやすくなります。マリネ液を塗るのを焼く直前にせず数時間前にしておくと、冷蔵庫で表面が少し乾き、焼いたときに皮がパリッとしやすくなります。

鶏を開くと均一に焼ける

丸鶏をそのまま焼くと、火の通りにくいももに火が通るまでに、胸肉が焼きすぎてパサついてしまいがちです。手順1のように背骨を取って平らに開く「スパッチコック」にすると、全体の厚みがそろって熱が均一に伝わり、焼き時間も短くなります。皮が全部上を向くので、どこも同じようにパリッと焼けます。

日本のオーブンは庫内が低いので、丸鶏を立体のまま入れるより、平らに開いたほうが上の熱源に近づきすぎず、焼きむらも少なくなります。

中心温度は75℃以上を確かめる

鶏肉は、中まで十分に火を通して食べる肉です。厚生労働省は、肉の中心部を75℃で1分以上加熱することを目安にしています。焼き上がりは見た目ではなく、温度計で確かめてください。

中心温度計の選び方と正しい刺し方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

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本場との違い

  • 焼き方:本場は鶏を丸ごと串に刺し、回転させながら炭火や薪の窯で焼きます。家庭版は鶏を平らに開いて、オーブンで焼きます。
  • 炭の香り:炭火の香りはつかないので、パプリカパウダーとアヒ・パンカの香りで補っています。
  • 黒ビール:店によっては、マリネ液に黒ビールを加えるところもあります。

食べ方

本場のポジェリアと同じように、フライドポテトとサラダを添えて、アヒ・ベルデやマヨネーズ、ケチャップをつけて食べます。飲み物は、ペルーで定番の黄色い炭酸飲料「インカ・コーラ」がよく合います(Amazon|楽天)。

串に刺した丸鶏4羽を上下2段に並べて焼いている様子。皮はこんがり色づき、ところどころ焦げている

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保存

  • 冷蔵:骨から外して保存容器に入れて2日程度
  • アヒ・ベルデ:冷蔵で2〜3日程度

もっと知りたい人へ

肉に塩をする意味やローストの科学を詳しく知りたい人には、料理科学の定番の本があります。

マギー キッチンサイエンス(ハロルド・マギー『On Food and Cooking』の日本語版)(Amazon|楽天)

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。