
家庭のオーブンで作るビリア(ケサビリアタコス)
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ビリアは、乾燥唐辛子とスパイスに漬けた肉をじっくり煮込む、メキシコ西部の煮込み料理です。真っ赤な煮汁でほろほろに煮えた肉を、トルティーヤにのせて食べます。
最近アメリカのSNSで大流行したのが、ビリアとチーズをはさんだトルティーヤを、煮汁の脂でカリッと焼いた「ケサビリア」です。焼いたタコスを煮汁にひたして食べるスタイルが、動画映えすると話題になりました。牛すね肉をダッチオーブンに入れてオーブンで煮込めば、家庭でも本場の味が作れます。
本場のビリアとは
ハリスコ州のヤギの蒸し焼き
ビリア(birria)は、メキシコ西部のハリスコ州で生まれた料理です。もともとは、ヤギの肉を唐辛子と酢、スパイスの漬けだれ(アドボ)に漬け、地面に掘った穴の窯で蒸し焼きにしていました。メキシコのほかの地域で「バルバコア」と呼ばれる、肉の蒸し焼き料理の一種です。
今では大鍋で煮込むのが一般的で、ヤギのほかに羊や牛でも作られます。ハリスコ州の州都グアダラハラでは、ビリアはお祝いの席の料理として、また二日酔いに効く朝ごはんとして親しまれています。
ティフアナで生まれた牛肉のビリア
アメリカとの国境の町ティフアナでは、1950年ごろ、屋台の主人グアダルーペ・サラテが、値段の高いヤギの代わりに牛肉でビリアを作り始めました。煮汁をたっぷり添えて出すスタイルも、彼の店から広まったとされています。メキシコではこの煮汁を「コンソメ(consomé)」と呼びますが、日本のコンソメスープの素とは別物で、肉と唐辛子を煮込んだ赤いスープのことです。この牛肉のビリアが、ティフアナ式の定番になりました。
ケサビリアの流行
ティフアナではやがて、ビリアとチーズをトルティーヤではさみ、煮汁の脂をつけて鉄板でカリッと焼く「ケサビリア」が生まれます。ケサ(quesa)は、スペイン語のケソ(queso=チーズ)から来ています。
2010年代に入ると、ケサビリアはロサンゼルスなどアメリカ西海岸の屋台で人気になり、SNSの動画をきっかけに全米に広まりました。チーズが糸を引く様子や、カップの煮汁にタコスをひたす様子が、動画で映えたからです。ビリアの煮汁でラーメンを作る「ビリアラーメン」も、ロサンゼルスで話題になりました。
ビリアのレシピ:材料(6〜8人分)
肉
すね肉は、筋が多く、長く煮込むと煮汁にとろみとコクを出してくれる部位です。骨つきのすね肉(オッソブーコ用)が手に入れば、さらに濃い煮汁になります。
アドボ(漬けだれ)
煮込み
- 水1L
- ローリエ1枚
ケサビリアタコス(12個分)
本場のケサビリアには、メキシコのオアハカ州生まれの「オアハカチーズ」を使います。モッツァレラのように糸を引く、さけるタイプのチーズで、日本ではモッツァレラで代用できます。
道具
作り方
肉に塩をする
牛すね肉と牛肩ロースを5cm角に切り、塩15gをまぶす。
唐辛子を焼いて戻す
唐辛子のへたと種を取り除き、何もひかないフライパンを中火で熱して、片面10〜15秒ずつ、香りが立つまで焼く。ボウルに入れて熱湯400mlを注ぎ、20〜30分おいて柔らかく戻す。
アドボを作る
フライパンでトマト、玉ねぎ、にんにくを焦げ目がつくまで8〜10分焼く。戻した唐辛子と戻し汁、焼いた野菜、酢、スパイスをすべてミキサーにかけ、なめらかにする。
漬ける
肉にアドボの半量をからめ、冷蔵庫で2時間〜一晩おく。
オーブンを予熱する
オーブンを160℃に予熱する。
煮込む
ダッチオーブンに肉をアドボごと入れ、残りのアドボ、水1L、ローリエを加える。コンロで煮立ててからふたをして、オーブンで3時間〜3時間半、すね肉がフォークで簡単にほぐれるまで煮込む。
肉をほぐす
肉を取り出し、フォーク2本で粗くほぐす。煮汁の表面に浮いた赤い脂を、お玉で大さじ4〜5ほどすくって小皿に取っておく(ケサビリアを焼くのに使う)。
煮汁を仕上げる
煮汁を味見して塩で調える。濃すぎるときは水を足す。
ケサビリアタコスにする
トルティーヤに脂をつける
トルティーヤの片面を、取っておいた赤い脂にさっとくぐらせる。
焼く
フライパンを中火で熱し、脂をつけた面を下にしてトルティーヤを置く。半分にチーズとほぐした肉をのせ、1〜2分焼いてチーズが溶け始めたら、二つ折りにする。両面がカリッとするまで、片面1〜2分ずつ焼く。
盛り付ける
カップに熱い煮汁を注ぎ、玉ねぎとシラントロを散らす。タコスを添え、ライムを搾る。タコスを煮汁にひたしながら食べる。
料理科学:赤い煮汁のコクととろみ
すね肉のゼラチンが煮汁にコクを出す
ビリアの煮汁は、スープなのにくちびるがぺたっとするほど濃厚です。このコクととろみのもとは、すね肉から溶け出したゼラチンです。
すね肉は、牛が歩くときによく動かす足の筋肉で、筋肉の繊維を束ねる結合組織がとても多い部位です。結合組織の主成分はコラーゲンというたんぱく質で、生のままでは硬い繊維ですが、70〜80℃あたりから時間をかけてゼラチンに変わっていきます。3時間ほど煮込むと、硬かったすね肉はほろほろにほぐれ、溶け出したゼラチンが煮汁に濃いとろみをつけます。煮汁を冷蔵庫で冷やすとぷるぷるに固まるのは、このゼラチンのためです。
コラーゲンがゼラチンに変わる温度と時間は、こちらの記事で詳しく解説しています。
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オーブンで煮込むと焦げつかない
鍋をオーブンに入れると、鍋全体がまわりから均一に温まります。コンロの直火のように底だけが熱くなることがないので、唐辛子のソースのように焦げつきやすい煮込みでも、混ぜずに放っておけます。160℃のオーブンでふたをしておけば、鍋の中は沸騰するかしないかの温度に保たれ、肉の表面が煮崩れにくくなります。

赤い脂でトルティーヤを焼く理由
煮込むと、煮汁の表面に鮮やかな赤い脂が浮いてきます。これは、肉から溶け出した脂に、唐辛子の赤い色素が溶け込んだものです。唐辛子の赤い色素カプサンチンは、にんじんのオレンジ色と同じカロテノイドの仲間で、水よりも脂によく溶けます。
ケサビリアでトルティーヤをこの赤い脂にくぐらせるのは、色と香りをつけるためだけではありません。脂をつけて焼くと、トルティーヤの表面が揚げ焼きのような状態になり、水分が飛んでカリッと香ばしく焼き上がります。煮汁にひたしても、すぐにはふやけません。
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酢の役割は香りと味
アドボに酢を入れると、肉が柔らかくなると言われることがあります。ただし、酢が効くのは肉の表面だけで、中まで柔らかくなるわけではありません。肉を柔らかくしているのは、長時間の加熱でコラーゲンがゼラチンに変わることです。酢は、脂の多い煮込みに酸味を加えて、味を引き締める役割をしています。
本場との違い
- 肉:ハリスコ州ではヤギの肉が伝統ですが、日本では手に入りにくいので、ティフアナ式と同じ牛肉で作っています。
- 煮込み方:本場は大鍋で長時間煮込みます。家庭版はダッチオーブンに入れてオーブンで煮込み、焦げつきを防いでいます。
食べ方
- ケサビリアタコス:上の作り方のとおり、チーズとはさんで焼き、煮汁にひたして食べます。
- ビリアのタコス:チーズなしで、温めたトルティーヤにほぐした肉をのせ、玉ねぎ、シラントロ、ライムで食べるのがハリスコ式です。
- ビリアの煮込み:器に肉と煮汁をたっぷり盛り、刻んだ玉ねぎとシラントロ、ライムを添えて、トルティーヤと一緒にスープとして食べます。
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保存
- 冷蔵:肉と煮汁を別々の保存容器に入れて4日程度
- 冷凍:小分けにして1か月程度。煮汁はゼラチンで固まりますが、温めればまた液体に戻ります
もっと知りたい人へ
煮込み料理やゼラチンの科学を詳しく知りたい人には、料理科学の定番の本があります。
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出典
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。